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玉三郎が語る、『新版 雪之丞変化』

玉三郎が語る、『新版 雪之丞変化』

 『新版 雪之丞变化』 坂東玉三郎の中村雪之丞(撮影:下村一喜)

 8月9日(金)に初日を迎える、歌舞伎座「八月納涼歌舞伎」。第三部で上演される『新版 雪之丞変化』について、坂東玉三郎が語りました。

新たな『雪之丞変化』を

 今年、歌舞伎座の納涼歌舞伎に初めて出演する玉三郎。「納涼らしい、娯楽性が高いものがいいと思い」、今回、『新版 雪之丞変化』の上演に至りました。

 

 これまで何度も映像化、舞台化されてきた『雪之丞変化』。今回、演出も兼ねる玉三郎自らが構成を大きく見直し、新版として生まれ変わります。『雪之丞変化』の物語は、「通常の手法で劇化すると、3時間やっても間に合わない」ので、『新版 雪之丞変化』では映像を用いて物語をスピーディーに展開させ、「芸術と敵討ちを(雪之丞が)自分でどう受け止めるかという話に凝縮し、(雪之丞の)芸術に対する心情に絞って」、見せます。

 

 「敵討ちも、やってしまったら無意味なもの。女方も、役者も消えていくもの。だから、華やかにしなくてはいけないという思いを込めた作品です。敵討ちではないところ、芸道の修行であったり、いろんなところでの修行が主。それで、敵討ちをしてしまったあとに、雪之丞が、そうやって生きてきたけれど、敵討ちというのはなんだったのかという芝居です」。その意図を盛り込むための工夫が散りばめられ、原作にはない七之助の役、秋空星三郎も加えられました。星三郎は雪之丞と同じ一座の先輩役者。才がありつつも若くしてその命を散らした役者の象徴のような役になるようです。

 

期待が込められた抜擢

 玉三郎、七之助、中車に1名を加えた、たったの四人の出演者で進行する、今回の舞台。秋空星三郎の弟子、鈴虫をダブルキャストで勤めるのは、尾上音之助と坂東やゑ六です。「(鈴虫は)とてもいいお役。やっぱり、新人がこういうところに出てくる必要があると思う。活躍してもらいたいので」と、二人への期待が表れます。鈴虫は、狂言回しの役割も果たし、雪之丞の生い立ちや、場面転換を語り、玉三郎が勤める雪之丞とともに物語をつないでいきます。

 

 また、今作では舞台装置は置かず、映像と実演が入り組んで展開していく、「連鎖劇の味」があると玉三郎は明かします。映像を担当するのは、脚本・演出補も勤める、日下部太郎。山崎咲十郎の本名です。玉三郎も今作では脚本の補綴を行っており、「脚本と演出は、二人でやっています。(咲十郎は)立廻りもよくつくってくれているので、どういう風にするかをよく理解している。歌舞伎座の舞台構造のことも、よくわかっている。そして、彼は映像も好き。こういう人に、どんどん、これから活躍してほしい。脚本も、やっぱり幕内からも出てもらいたい。座付作者のように」と、抜擢に至った背景を語りました。

 

 映像を使ったテストはこれからで、「映像を用いた作品は、実際に舞台上で演じる役者と映像を見ないとバランスがわからない。映像は使うのが難しい」としつつ、「これがうまくいけば、(歌舞伎座でも)まだまだいろいろな作品ができるんじゃないかしら」と、思いを込めます。第一部、第二部、第三部と彩豊かな狂言立てが並ぶ「八月納涼歌舞伎」。第三部は「楽しくてあっという間に終わるんじゃないかしら」という玉三郎の言葉に、期待が膨らみます。 

 歌舞伎座「八月納涼歌舞伎」は8月9日(金)から27日(火)までの公演。チケットは、チケットWeb松竹チケットホン松竹で販売中です。

 

2019/07/31