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勘九郎が語る、歌舞伎座『傾城反魂香』
12月1日(火)から始まる歌舞伎座「十二月大歌舞伎」第三部『傾城反魂香』に出演する中村勘九郎が、公演に向けての思いを語りました。
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8月の歌舞伎座再開以来、「八月花形歌舞伎」と「十月大歌舞伎」に続き、3度目の出演となる勘九郎。「こんな大規模な公演を毎日行っているにも関わらず、一人の感染者も出していない。本当に誇らしいです」と振り返ります。12月も「より一層気を引き締めて、この状況を続けていくことが、未来の歌舞伎につながると信じてやっていきたいと思います」と力強く述べます。
古典作品がもつパワー
『傾城反魂香』はファンタジー要素があってとても好きな作品の一つ、という勘九郎。「父も祖父も又平を演じていないので、子どもの頃からおとく目線で見ていました。それで三津五郎さんに習いにいって、型を教えていただきました」と、又平を初役で演じたときのエピソードを明かしました。
吃音のため悲劇に見舞われる又平について、「見ているだけではそんなに疲れないのではと思ったのですが、やってみると汗びっしょりになる。体力というか精神をそぎ落とされ、頭を使う感じ。口が不自由であることはコンプレックスの一つですけれども、生まれついてのこと。あまり卑下せず、ネガティブにとらえないようにやらなければ」と、演じるうえでの心境を語ります。
特に、将監北の方が「又平でかしゃった、でかしゃった」と衣服大小を持って出てくる場面では、「本当にいつもぐっとくる」という勘九郎。そのように登場人物の気持ちになる感覚を、「非日常といいますか、摩訶不思議な世界に入り込める」と表現し、それこそが「古典がもつパワーなんだと思います」と、古典作品の魅力にふれました。
12年ぶりの又平とおとく
今回、又平の女房おとくを勤めるのは猿之助。平成20(2008)年浅草公会堂の「新春浅草歌舞伎」で、当時は勘太郎と亀治郎として又平とおとくを演じましたが、今回はお互い名前が変わり、「勘九郎、猿之助となって12年ぶりに歌舞伎座で行えることがとてもうれしいです」と、笑顔を見せます。当時を振り返り、「夫婦役はほとんど初めてに近かったのですが、おとくの猿之助さんの手のぬくもりや、夫に対する眼差し、すべてを支えてくれるおとくだったので本当に毎日楽しかった」と懐かしみました。
猿之助との共演は、「浅草のときもそうですし、その後ご一緒したときも非常に安心感がある。目指すものや方向性が一緒というか、同じ方向を向いている方と一緒に芝居ができるのは、とても楽しいことなんだなと思います」。その言葉から、この作品の魅力でもある又平とおとくの夫婦愛を、12年ぶりに二人がどのように演じるのか、期待がふくらみます。
違和感を感じさせない芝居を
通常は上演時間が1時間20分程の『傾城反魂香』を、四部制の興行形態のなかで短縮した上演時間にするにあたり、お客様に「違和感を感じさせないような運びでできたら」と話します。せりふのカットについては「これは言ってる意味がわからないと思っても、実は大事な説明をしていたり、言っておかないと世界観というものが崩れてしまうことがある」と説明。「昔のテープを聞くとものすごくテンポが早いんですよ。だから、各々の役者同士でそのテンポを出していくことを目指せば、(上演時間が)自ずと縮まるのではないか」と、限られた上演時間で作品の魅力を伝えることをテーマとして掲げました。
「ピンチはチャンスじゃないですけれども、できない、制限されているなかでも、お客様に満足して帰っていただくために想像してやっていくことが、歌舞伎なんじゃないかなと。従来の優れた演出、先輩方が築き上げた型というものがあって、今日私たちが、名作を名作としてやらせていただいている。お客様に楽しんでいただく工夫をこれからもどんどんし続けたいです」と、意欲的に語ります。
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歌舞伎座「十二月大歌舞伎」は、12月1日(火)から26日(土)までの公演。チケットは、チケットWeb松竹、チケットホン松竹で発売中です。