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歌舞伎座「八月花形歌舞伎」初日開幕
8月3日(火)、歌舞伎座「八月花形歌舞伎」が初日の幕を開けました。
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昨年8月に、5カ月間の休演の後に再開した歌舞伎座。新型コロナウイルス感染拡大防止対策を徹底しながら興行を続け、1年が経ちました。快晴のなか、今年も「八月花形歌舞伎」の初日を迎えました。
第一部は三代猿之助四十八撰の内『加賀見山再岩藤(かがみやまごにちのいわふじ)』。今月は従来の通し狂言から、亡霊となった岩藤の復讐に焦点を当て再構成した、「岩藤怪異篇」としての上演です。猿之助が当面の間休演することとなり、巳之助が代役を勤める初日。浅葱幕が振り落とされ、満開の桜が咲き誇るなか巳之助演じる多賀大領が登場すると、客席からはあたたかい拍手が送られます。そこから御台梅の方、奴伊達平、望月弾正、安田隼人と次から次へと役を早替りし、客席を魅了します。
雀右衛門演じる二代目中老尾上への恨みを晴らそうと、白骨化した骸骨が寄せ集まり、巳之助演じる岩藤が亡霊となって現れます。その後、在りし日の局姿となり舞台上を傘で浮遊し、見せ場となる宙乗りを披露します。複雑に絡み合う多賀家のお家騒動を、ケレン味あふれる演出をまじえ、ドラマティックに魅せ、客席から万雷の拍手が送られました。
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第二部は三遊亭円朝の口演をもとにした怪談噺『真景累ヶ淵』で始まります。顔に腫物ができ、病床に伏している七之助演じる豊本節の師匠豊志賀。鶴松演じる歳が離れた内弟子新吉と深い仲にありますが、自身の容貌が変わり果てたことにより疑心暗鬼になり、新吉と児太郎演じる若い娘お久との仲を勘繰ります。その嫉妬はいつしか身をも滅ぼし…。やがて勘九郎演じる噺家さん蝶から明かされる真実に、背筋が凍ります。客席からは笑いも起きる一方、巧みな物語の展開に引き込まれ、いつしか新吉の恐怖に飲み込まれていきます。
続く『仇ゆめ』は、狸の恋を描く中村屋ゆかりの舞踊劇。七之助演じる島原の傾城深雪太夫に恋をした勘九郎演じる狸は、彼女が思いを寄せる舞の師匠に化けて近づこうとしますが、扇雀演じる揚屋の亭主に気づかれてしまいます。太夫や揚屋の亭主を交えて軽快な雰囲気に包まれ、狸がユーモラスな踊りを見せると客席からは笑いと拍手が起きます。はかなくも美しい一途な恋が迎える結末に、胸が熱くなります。
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第三部の序幕は、木曽義賢の壮絶な最期が描かれる義太夫狂言『義賢最期』。源氏の再興を願う、幸四郎演じる義賢は、奴折平として身を隠す多田行綱に思いを託します。その心の動きは義太夫との掛け合いにより描かれ、見るものに訴えかけます。病気ながらに命をかけ平家とひとり戦う、義賢。武士の礼服である素襖大紋を着ての迫力あふれる大立廻りは美しく、「蝙蝠の見得」からそのまま三段に倒れる「仏倒れ」で義賢が満身創痍の最期を迎えると、客席は熱い拍手に包まれました。
続いて上演される、『伊達競曲輪鞘當(だてくらべくるわのさやあて)』は桜が満開の吉原が舞台。荒事味あふれる歌昇演じる不破伴左衛門と、和事味漂う隼人演じる名古屋山三による「渡りぜりふ」は聴きどころです。 二人の対照的な衣裳が美しく、そこへ新悟演じる茶屋女房お新がそろうと錦絵のような鮮やかさがあり、廓情緒にあふれます。
幕切れの『三社祭』は浅草が舞台のしゃれっ気あふれた清元の舞踊。染五郎と團子がそれぞれ「悪」 と「善」の面をつけ、悪尽くし、善尽くしの振りを躍動的に踊ります。若い二人の息ぴったりな舞いに、あたたかな拍手が送られました。
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歌舞伎座木挽町広場では、8月20日(金)から9月27日(月)まで、歌舞伎巡業公演地「全国物産展」が開催されます。これまで開催された、北海道から沖縄までの地方物産展で、大人気だった商品を販売します。ぜひお立ち寄りください。
清新な顔ぶれが並ぶ歌舞伎座「八月花形歌舞伎」は、28日(土)までの公演。チケットはチケットWeb松竹、チケットホン松竹で販売中です。