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仁左衛門が語る、歌舞伎座『東海道四谷怪談』

仁左衛門が語る、歌舞伎座『東海道四谷怪談』

 

 9月2日(木)から始まる歌舞伎座「九月大歌舞伎」第三部『東海道四谷怪談』に出演の片岡仁左衛門が、公演に向けての思いを語りました。

38年ぶりの『東海道四谷怪談』

 歌舞伎座「九月大歌舞伎」の第三部では『東海道四谷怪談』が上演され、仁左衛門は38年ぶり3度目の民谷伊右衛門を演じます。お岩とお花を演じる玉三郎とも、昭和58(1983)年以来の組み合わせとなり「玉三郎さんと(『東海道四谷怪談』での共演)はずいぶん久しぶり。38年前ですがそんなに経っていると思えない。前からもう一度やりたいね、と言っていたので、今回かないました」と、笑顔を見せます。「前回は(尾上)辰之助さんの直助権兵衛でしたが、今回はその息子の松緑さんが直助を演じるので、うれしさや懐かしさもあり、いつもと少し気持ちが違います」と切り出します。

 

 今回上演される二幕目と三幕目の前段では、御家金を横領したことを気づかれ、娘お岩との離縁を迫る舅の四谷左門を、民谷伊右衛門が斬り殺してしまう陰湿な殺し場が展開されます。典型的な色悪である民谷伊右衛門について仁左衛門は、「ありがちなワルですよね。 惚れたお岩を途中で嫌になるし、生活が苦しくなると楽な方へ走る。とにかく自分の身を守るためには何でもする」と説明します。ただ、「伊藤喜兵衛内の場」でお梅との縁談があがったとき、「婿に入れば裕福になり、しかも仕官もかなう道がありながら、あの悪い伊右衛門が一度は断る」、と極悪人の伊右衛門に一瞬の「良心」を感じることも明かしました。

 

仁左衛門が語る、歌舞伎座『東海道四谷怪談』

 ▲ 『東海道四谷怪談』片岡孝夫(現 片岡仁左衛門)(昭和58<1983>年6月歌舞伎座)

仁左衛門が語る、歌舞伎座『東海道四谷怪談』

 『東海道四谷怪談』片岡仁左衛門
(令和3<2021>年9月歌舞伎座)撮影:柏原孝史

 

歌舞伎の美

 コロナ禍で上演時間が限られているなか、常に「何が喜んでいただけるか、どうしたらお客様がきてくださるか」を考え、その選択の一つとして、今回古典作品の『東海道四谷怪談』があがったといいます。鶴屋南北の作品は「筆にたとえると、太い筆で書いているかと思えば細かい部分もあったりと、太い筆の勢いと繊細なところ」をもち合わせていると表現した仁左衛門。続けて、人を惹きつける「悪の魅力」があると語り、「ほとんどの人が善人でいたいという気持ちで押さえているだけであって、悪の要素をもっていると思います。お客様には残酷な演目が結構喜ばれることが多い。(自分自身も)舞台の場合にはそれを堂々とやれますからね(笑)」と悪役を演じることを楽しみにしている様子がうかがえます。

 

仁左衛門が語る、歌舞伎座『東海道四谷怪談』

 

 江戸の市井のリアルな様子や登場人物それぞれの細かい心理描写がみどころのこの作品でも、「“芝居”をお見せするのではなく、そこに起きた、“現場”を見ていただく。そんなようなお芝居ができたら」と意気込みます。「そのなかで歌舞伎で大事なのはやはり、“美”ですよね。“美”がなくなったら、ほかの演劇と変わらなくなってくる。形に気持ちを乗せるのではなく、気持ちに形が付いてくる。それが大事だと思う」と、自身が演じるうえでの心境を語ります。

 

 現在の状況について、「歌舞伎は客席との相乗効果で劇場の雰囲気が盛り上がっていくものですから、かけ声がないっていうのは寂しい」と本音をのぞかせながらも、「それにこだわっていてはいけない」と仁左衛門。「劇場まで足を運んでいただけることは、本当にありがたいことですし、皆様もそれだけ待ってくれていた。毎回一所懸命やっているのですが、気も新たに皆様に満足していただけるようにやらなければ、と思っています」と、公演に向けて力強く決意を語りました。

 歌舞伎座「九月大歌舞伎」は9月2日(木)から27日(月)までの公演。チケットは、チケットWeb松竹チケットホン松竹で販売中です。

2021/08/27