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「九月南座超歌舞伎」が南座で開幕

 9月3日(金)、南座で「九月南座超歌舞伎」の本公演が初日を迎えました。

 南座での上演は2回目となる「超歌舞伎」。昨年は新型コロナウイルスの感染拡大を受け、全公演中止となりましたが、今年は感染予防対策を講じて公演が行われます。

 

 2年ぶりとなる南座での超歌舞伎は、映像による『超歌舞伎の魅力』で幕を開けます。平成28(2016)年から始まった超歌舞伎の全作品のハイライト映像が、それぞれのテーマ曲とともに流れ、これから始まる舞台への期待が高まります。

 

 続いては、この公演のためにつくられた舞踊『都染戯場彩(みやこぞめかぶきのいろどり)』。公達たちが京の桜の名所を語り踊る華やかな大内の場に続き、月の光が映える吉原で鳶頭と芸者との粋な恋模様が繰り広げられます。第三景では、雪景色の清涼山で、獅童勤める白頭の雄獅子の精、初音ミク勤める赤頭の雌獅子の精が勇壮に舞います。雌獅子の精の毛の色が“ミク色”に変わる演出も見逃せません。二人の息の合った舞に、客席から熱い拍手が送られました。

 

 『御伽草紙戀姿絵(おとぎぞうしこいのすがたえ)』は、ご当地京都を舞台にした物語です。冒頭の口上で、獅童は南座で上演する喜びや感染防止対策のお願いを語り、「演者と皆様が一つになって盛り上げられたら幸いです」とご挨拶。客席もペンライトの光や拍手で熱く応じます。

 

 さらに獅童が、今回、特別に製作した“大向うの声”が収録されたペンライトを紹介し、「萬屋!」「初音屋!」と、ペンライトの音声で舞台に参加する方法をご案内。これで準備は万端となりました。

 

 発端は、國矢演じる平井保昌と女郎蜘蛛の立廻りから始まります。山姥茨木婆は、倒された蜘蛛の復活を誓います。だんまりで、妖術を破る方法が記された巻物を手に入れたのは、獅童演じる盗賊の袴垂保輔。登場する俳優に合わせ、客席のペンライトの色や音声が次々と変わっていく様子は超歌舞伎ならではの景色です。

 

 ところ変わって九條の廓。ミク演じる艶やかな七綾太夫の登場を、観客は緑のペンライトと「初音屋!」の音声で迎えます。討たれた七綾太夫が、女郎蜘蛛の力を得て化生としてよみがえる場面は迫力満点。獅童演じる源頼光の前で、七綾太夫扮する胡蝶が拍子舞を舞う姿は眼目の一つです。一方、保昌のもとに弟の保輔が現れ、過去を悔いながら妖怪退治のために切腹するくだりは、涙なしには観られません。

 

 大詰の冒頭では鏡音レンの大薩摩と鏡音リンの三味線が登場し、最後の戦いへ向け、盛り上げます。NTTの超高臨場感通信技術「Kirari!」の「リアルタイム被写体抽出技術(分身の術)」を使い襲いかかる茨木婆や、強力な妖力をもつ七綾太夫を相手に、手に汗握る立廻りを展開。あわやというところで、頼光が「数多の人の言の葉」と「白き炎」を求めると、客席は白いペンライトと「萬屋!」という音声で力強く応えました。

 

 「リアルタイムスタイル変換技術(超越の術)」で、観客から寄せられた力を得た頼光。蜘蛛が繰り出す千筋の糸をものともせず、七綾太夫の亡魂を退散させるのでした。エンディングで流れる「ロミオとシンデレラ」の音楽に合わせて、色とりどりのペンライトが揺れ、客席の熱量は最高潮に。割れんばかりの拍手が南座にあふれるなか、初日の幕が下りました。

 南座「九月南座超歌舞伎」は26日(日)までの公演。チケットはチケットWeb松竹チケットホン松竹で販売中です。また、12日(日)より、本公演のオンライン配信を行います。詳しくはこちらをご覧ください。

2021/09/06