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四世坂田藤十郎を偲ぶ会を開催

四世坂田藤十郎を偲ぶ会を開催

 

 10月28日(木)、都内ホテルで、四世坂田藤十郎を偲ぶ会が行われました。

四世坂田藤十郎を偲ぶ会を開催

 88年の軌跡をたどる、思い出の写真が並びます

 昨年11月に逝去されてから1年の節目を前に、四世藤十郎を偲ぶ会が行われました。白と紫の花々が敷き詰められた祭壇の上には、平成21(2009)年に文化勲章を受章したときに撮影された写真が置かれ、藤十郎が穏やかな表情で、献花に訪れた来場者を迎えました。また、会場内には、さまざまな名舞台やプライベートの様子を写した、在りし日を偲ぶ写真を並べたパネルが設置され、来場者は1枚ずつゆっくりと眺めながら、藤十郎との思い出やその姿を懐かしみました。

 

 会に先立って行われた取材の場では、妻の扇千景さんの挨拶に続き、中村鴈治郎が生前の御礼を述べました。「父が亡くなりましたことを今日改めて感じています。これからは弟たちと、父の思いを全部背負って生きていかなければ」と、思いを噛みしめます。「父は、坂田藤十郎になることをはじめ、やりたいことへ突き進んで、まっとうした人。自分のなかで消化し勉強しながらやり通して、そして最後まで若くいた人だったと思います」と、故人を偲びました。

 

 中村扇雀は、「近松(門左衛門)への愛情や、231年ぶりに坂田藤十郎という名前を復活させようとした思いなど、父の残したものを引き継いで、歌舞伎の素晴らしさを一人でも多くの方にお伝えしたい」と、気持ちを込めます。藤十郎の当り役であった『曽根崎心中』のお初を扇雀が演じたときに、藤十郎から「うれしかったよ」というひと言をもらった、というエピソードを明かし、「一生忘れられない言葉です」と、感慨深げに語りました。

 

 続いて中村壱太郎は、「まさに今日、バトンを渡されたのだと思っています。祖父は、歌舞伎は江戸歌舞伎と上方歌舞伎が両輪として回っていかないといけないと言っておりました。これからも習ったことを体現していくことに努めたいです」と、まっすぐな眼差しで述べました。中村虎之介は、「家族というより偉大な先輩と感じていました。まだまだ遠い存在ですが、祖父の歩んだ道をなぞって、立派な役者になれるよう精進しています」と、真摯な思いを伝えました。

 

 また、鴈治郎が、12月の南座「當る寅歳 吉例顔見世興行」で追善狂言として『曽根崎心中』が上演されることに触れ、藤十郎と最後にこの演目で共演したときの思い出を語り、涙を浮かべる場面も。「今度は扇雀と、父の思いをつくり上げ、皆様にしっかりと届けられるような『曽根崎心中』をやらせていただきたいと思っております」と、藤十郎の思いを継いでいく覚悟を言葉に込めました。

 

四世坂田藤十郎を偲ぶ会を開催

 左より、中村虎之介、中村扇雀、中村鴈治郎、中村壱太郎

2021/11/09