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幸四郎、愛之助が語る南座「吉例顔見世興行」

幸四郎、愛之助が語る南座「吉例顔見世興行」

 

 12月2日(木)から始まる南座「當る寅歳 吉例顔見世興行 東西合同大歌舞伎」第三部に出演する松本幸四郎、片岡愛之助が、公演に向けての思いを語りました。

上方由縁の『雁のたより』

 今年の南座「吉例顔見世興行」第三部では、上方狂言として知られる『雁のたより』が、十三世仁左衛門襲名披露公演での演出をもとに、現・片岡仁左衛門の監修で上演されます。「誰よりも一番驚いているのは僕だと思っています」と切り出した幸四郎は、「『雁のたより』を東京の俳優がやるというのは、初めてのことなのではと思うくらい、無謀なことだと私自身は認識しています」と正直な心境を明かします。

 

幸四郎、愛之助が語る南座「吉例顔見世興行」

 

 二枚目であり三枚目という上方歌舞伎独特の役柄である五郎七に挑むことについては、「自分が上方役者だと思い、誰よりも楽しんで勤めることに尽きると思っています。上方の言葉を話し、上方の役を勤めるということだけではなく、それ以上のところに行くことを目指したいです」と、意欲を見せます。

 

 2年ぶりの顔見世興行出演となる愛之助は、若旦那金之助を初役で勤めます。「平成18(2006)年に若殿前野左司馬を勤めさせていただいた際は、成駒家さんの型でしたが、今回は成駒家さんとは違う松嶋屋の台本ですので、気持ちを新たにやらせていただきたいです」と意気込み、「すっかり上方役者の幸四郎さんと一緒にお芝居をさせていただくことは、上方役者としてはすごくうれしく思っております」と、共演を喜びます。

  

幸四郎、愛之助が語る南座「吉例顔見世興行」

 

一年の見納めに相応しい歌舞伎を

 5役を演じ分ける早替りや、迫力ある立廻りがみどころの舞踊劇『蜘蛛絲梓弦』では、愛之助が小姓や蜘蛛の精など5役を、幸四郎が源頼光を勤めます。「『蜘蛛絲梓弦』は何度かやらせていただいていますが、今回は幸四郎さんにも出ていただき、とても華やかな舞台になるかと思っています」と愛之助が語ると、幸四郎も「歌舞伎を観た実感がしっかり味わえる作品ですので、年の最後に見納めとして観ていただく歌舞伎狂言としては、最たるものだと思っております。大事に、凛とした頼光を勤められれば」と、思いを込めます。

 

 愛之助は、自身が演じる役の一つである傾城薄雲太夫が、頼光との逢瀬を楽しむ場面について触れ、「幸四郎さんと手と手を取り合って見つめ合うなんて久しぶりですので、楽しみです」と笑顔を見せます。また演出のみどころのひとつとして、「劇場によって出入りを考えるのですが、今回は南座にあった出入りを工夫したいと思っております。これは観てのお楽しみ」とアピールし、南座ならではの演出に期待がふくらみます。

 

上方役者を偲んで

 今年の顔見世興行第一部で追善狂言が上演される、四世坂田藤十郎について聞かれた幸四郎は、「おじ様が(顔見世興行に)いらっしゃらないことがすごく不自然に思いますし、それだけ大事で大きい存在だと改めて感じました。おじ様のすごさを皆様に知っていただくためにも、自分は舞台に立っていきたいと思います」と、気を引き締めます。続けて愛之助は、「本当に偉大な先輩。私が『寺子屋』の松王を勤めたときに、御台様で出てくださったことがあり、こんなやりかたもある、と私に手取り足取り教えてくださいました」と振り返り、四世藤十郎への感謝の気持ちをにじませました。

 

  今年惜しくも世を去った二世片岡秀太郎については、「いろいろ教えていただいた思い出ばかり」と懐かしむ幸四郎。「この顔見世興行では、本当にありがとうございますという、追善の思いを込めて、舞台に立たせていただきたいと思っています」。愛之助は、「父がいない顔見世は初めてですが、いまだに信じられず不思議な感覚です。『輝虎配膳』で一緒に出演させていただいたのが印象的で、もっとたくさんお芝居をしたいなと思っていた矢先ですが、天国から見守ってくれているのではないかと思って、一役一役、すべての役をしっかりと勤めたいと思います」と、感慨を込めて語りました。二人はともに強い思いを胸に、「吉例顔見世興行」の舞台に臨みます。

 南座「吉例顔見世興行」は12月2日(木)から23日(木)までの公演。チケットはチケットWeb松竹チケットホン松竹で販売中です。

2021/11/30