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幸四郎が語る歌舞伎座「三月大歌舞伎」、「四月大歌舞伎」
3月3日(木)から始まる「三月大歌舞伎」『石川五右衛門』、4月2日(土)から始まる「四月大歌舞伎」『荒川の佐吉』に出演する松本幸四郎が、公演への思いを語りました。
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五右衛門の大きさを見せる
3月に幸四郎が演じるのは石川五右衛門。叔父の二世中村吉右衛門が初代から継いで当り役としていたこの役を、直に教わったと言います。また、自分が此下久吉を演じた際には、叔父の演じる五右衛門から「何事にも動じない大きさ」を強く感じた、と振り返り、「(初めから)天下の大盗賊として登場しますので、悪の魅力を必要とするお役です。心して勤めたい」と、真剣な表情で語ります。
叔父の吉右衛門からは、「まずは(五右衛門の)気持ち、心。そしてそれを伝えるための声の技」について教えを受けたそう。「声の趣きや太さ、音の高さ、せりふの間。一つひとつの言葉のもっていき方はある意味で繊細ですが、豪快に聞こえ、伝わらないといけない。本当に完成された芸で、心と技のバランスを感じました。叔父に教えていただいた芸を、自分の身体を通して一人でも多くの方に見ていただけるように」と、この作品に臨む心境を明かしました。
また、本作のみどころについて語る段になると、五右衛門が中納言に扮して花道から登場する場面や、幼馴染であり好敵手の久吉との再会の場、そして「やはり山門の場の絵面。あの山門の真ん中に立つ存在感を感じていただきたい」と、枚挙にいとまがない様子。さらに2年半ぶりの宙乗りとなるつづら抜けについては、「ファンタジーの世界を堪能していただけるようにしたい。皆様が驚くような工夫を考えています」と、期待を誘いました。
これほど泣いた芝居はない
4月に出演する『荒川の佐吉』。幸四郎はこれまでに佐吉の仲間である辰五郎を二度、佐吉を一度勤めています。「おじさま(仁左衛門)の佐吉で辰五郎を勤めさせていただいた記憶が強烈に残っています。これほど毎日泣いた芝居はありません。また、自分が佐吉を演じさせていただいたときには、おじさまから、途中で佐吉がどんどん変化していくことが大事だと教えていただきました」と、感慨を込めて話します。
「佐吉は置かれた状況や時の流れに乗って、それに逆らわずに生きている。誰よりも人らしく生きるその生き方に、男の強さを感じます」。そんな佐吉の成長が、この作品の眼目の一つだと言います。「序幕と最後に花道の引込みがあります。引っ込んでいく姿がどれだけ変わるのか、同じ花道の引込みを使うことで、佐吉の変化を明確に表現していく。そのためにも、それぞれの出来事を本当に体験し、佐吉の実人生を送っているような気持ちで生きたいと思っています」。
真山青果の作品には「心に残る言葉がある。日本語の美しさ、力強さを感じます」と、熱い思いをのぞかせた幸四郎。白鸚や梅玉をはじめとする充実の顔ぶれに、「幸せな配役」と喜びを表します。また、現在も引き続き上演時間の制限があるなかで、「今回は齋藤雅文さんに演出に入っていただき、テンポや演出を変えて、進化した『荒川の佐吉』を目指します。真山青果の『荒川の佐吉』の世界で、佐吉になりきりたい」と、意気込みを見せました。
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歌舞伎座「三月大歌舞伎」は、3月3日(木)から28日(月)まで、「四月歌舞伎」は4月2日(土)から27日(水)までの公演。「三月大歌舞伎」 はチケットWeb松竹、チケットホン松竹で販売中、「四月大歌舞伎」は3月14日(月)から発売予定です。