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歌舞伎座「三月大歌舞伎」初日開幕

歌舞伎座「三月大歌舞伎」初日開幕

 

 今月も、歌舞伎座は三部制(各部総入れ替え、幕間あり)で公演中。客席は間隔を空けた2席並びを原則とする配置で販売し、引き続き換気、消毒など、感染予防対策を徹底してお客様をお迎えします。

 

 第一部は、三代猿之助四十八撰の内『新・三国志』の「関羽篇」を上演。冒頭では、「三国演義」の作者・羅貫中ならぬ、中車の羅昆中が、軽快な語り口で観客を三国志の世界へ誘いました。桃が咲き誇るなかをせり上がってきた猿之助の関羽、中車の張飛、笑也の劉備が義兄弟の盟約を結ぶ「桃園の誓い」の場が、これから始まる壮大な物語を期待させます。「戦なき世を」夢見る三人の熱き心は、出会う人々を魅了していきます。弘太郎改め青虎の軍師・諸葛孔明を迎える「三顧の礼」の場面では、関羽が「青き虎となり」とせりふに織り込むと、客席からも祝福の拍手が送られました。

 

 フルオーケストラの演奏による初演以来の加藤和彦の音楽が歌舞伎座に鳴り響き、同じく初演以来となる毛利臣男の衣裳の美しさも、いっそう舞台を盛り上げます。白い衣に身を包んだ関羽が力強く宙を舞うクライマックスでは、三人の絆を象徴する桃の花びらが舞いしきり、劇場が薄紅一色に。「夢見る力」を失わず、互いを信じ続けた英雄たちが織りなす歴史浪漫譚に、誰もが胸を熱くするひとときとなりました。

 第二部は『河内山』から始まります。質屋上州屋の娘の災難を知った、仁左衛門演じる河内山宗俊。礼金の約束をとりつけると、身分を偽りながら堂々と、鴈治郎演じる松江出雲守の屋敷へ乗り込みます。黙阿弥ならではの流麗な七五調のせりふや、悪賢くも色気と愛嬌のある河内山の表情や仕草が、観る者の耳も目も釘付けに。「馬鹿め!」と河内山が痛快に言い放つと、待ってましたとばかりに場内も沸き返りました。

 

 続いては、落語をもとにした世話狂言の『芝浜革財布』です。菊五郎勤める棒手振りの魚屋政五郎が、大金の入った革財布を拾うところから話が始まります。すっかり浮かれて酔い潰れ、目を覚ました政五郎に、時蔵勤める女房おたつが告げた言葉とは…。江戸情緒たっぷりに描かれる庶民の暮らしを背景に、江戸っ子気質の粋な政五郎、夫への深い情愛にあふれるおたつが見せるやりとりに、じんわりと心が温まるひと幕です。

 第三部の幕開けは『信州川中島合戦』。芝翫演じる長尾輝虎は、幸四郎演じる直江山城守の妻唐衣を演じる孝太郎が敵の軍師山本勘助の妹であることを利用し、魁春演じる母越路と雀右衛門演じる妻お勝を館に招きます。息子のため饗応を断る越路、衣を脱いで憤怒する輝虎、止めに入るお勝たちと、多彩な登場人物の緊迫感に満ちたやり取りに、観客も手に汗を握って見守ります。大道具や衣裳の絢爛さも目に映える、近松門左衛門によるドラマティックな時代物です。

 

 締めくくりは、『石川五右衛門』。幸四郎が、叔父の二世吉右衛門に教わった五右衛門を演じます。勅使に扮した五右衛門がちらりと見せる表情に大盗賊の凄みをにじませる一方、錦之助の久吉と、旧友として語らう場面では無邪気さも漂わせます。五右衛門が宙に浮いたつづらの中から現れる「つづら抜け」の宙乗りに客席の興奮も高まるなか、迎えた大詰。南禅寺山門から桜を見渡し「絶景かな」と煙管をくゆらせ、圧倒的な存在感をたっぷりと見せます。五右衛門の豪快で大らかな魅力と眼目が凝縮された、まさに集大成といえる作品の爽快な幕切れに、鳴りやまない拍手が劇場を包み込みました。

歌舞伎座「三月大歌舞伎」初日開幕

 

 春らしい飾り付けも楽しめる歌舞伎座地下2階の木挽町広場では、3月28日(月)まで、有名作家25人の作品を一堂に集めた、第3回「ねこ展~ねこ・猫・ネコ アート&グッズフェア」を開催中です。歌舞伎座へご来場の際にはぜひお立ち寄りください。

 

 歌舞伎座「三月大歌舞伎」は28日(月)までの公演。チケットは、チケットWeb松竹チケットホン松竹で販売中です。

2022/03/10