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尾上右近が語る、歌舞伎座『弁天娘女男白浪』

尾上右近が語る、歌舞伎座『弁天娘女男白浪』

 

 5月2日(月)から始まる歌舞伎座「團菊祭五月大歌舞伎」、第三部『弁天娘女男白浪』に出演の尾上右近が、公演への思いを語りました。

 3年ぶりに團菊祭の名を冠して上演される歌舞伎座の5月公演。その第三部で、尾上右近が音羽屋ゆかりの演目『弁天娘女男白浪』の弁天小僧菊之助を、歌舞伎座で初めて勤めます。「緊張します!」と笑顔を見せながら、「大変なことだと思っておりますが、気持ちよく、楽しく、潔く。真っすぐ真摯に、熱く熱く弁天小僧を勤めたいと思っています。おおいに背伸びをし、その身長が等身大だというつもりで体当たりしていきたい」と、開口一番に強い決意を述べました。

 

尾上右近が語る、歌舞伎座『弁天娘女男白浪』

 

歌舞伎を信じて挑む音羽屋の芸

 弁天小僧との出会いは、「祖母の部屋」だと言う右近。曾祖父・六世尾上菊五郎のテープを何度も聴き、ツラネのせりふを覚えたといいます。「しっかり演目を認識したのは平成15(2003)年1月の歌舞伎座で、右近を名乗る前に黒衣を着て菊五郎のおじさまの楽屋に通っていた頃、おじさまがされていたのが弁天小僧でした。迫力があり、はつらつ、ギラギラとされていて、役と役者の境目がわかりませんでした。千穐楽の日はとても寂しかったのを覚えています」と、懐かしみます。

 

 そんな右近が令和元(2019)年の自主公演「第五回 研の會」で、「若いときにやっておかなければ」という思いから、弁天小僧に挑戦しました。「やらせてくださいと菊五郎のおじさまにお願いするのは、少し照れ臭かったです。稽古では、“歌舞伎の匂いがしないといけない”と言われたのが印象的でした。今考えると、歌舞伎を信じること、回数を重ね、自分がやってきたことの密度を信じるということだったのだと思います」と、当時の指導を振り返ります。

 

皆に愛される弁天小僧を 

 小道具や手順も多く、「繊細な精神と開き直りの潔さが同居するお役で、自主公演では気持ちよく演じるところまではたどり着けませんでした」と、冷静に分析する右近が次に挑むのは、本公演初の舞台です。その舞台が團菊祭となることについて、「こんなにもうれしいのかと、自分のなかで團菊祭がとてつもなく大きな意味をもつのだと改めて感じましたし、今までお世話になった方々の顔が、数えきれないくらい浮かびました。右近の弁天小僧も好き、と言ってくださるお客様が、一人でも増えてほしいです」と、感慨を込めて語りました。

 

 「今回は20代最後の挑戦。もっと自由に自分を解き放って、弁天小僧のもつ生意気さを出さないと」と、意気込みます。また、自主公演では先輩が勢ぞろいで稽古をつけてくれたと語り、「(菊五郎に)皆とのやり取りのなかで存在するのが弁天小僧だと教わりました。今回は先輩、同輩たちと幕を開けることができますので、前向きなやり取りを繰り広げたいです」と、抱負を述べました。

 

名ぜりふを自分の声で

 特に大事にしたい場面やせりふについて、「毎分毎秒ですが」と前置きしながら、“知らざあ言ってきかせやしょう”の名ぜりふを挙げ、「さまざまな言い方があると思いますが、やはり自分の言葉として言いたいです。その瞬間で決まってしまうところがあるのではないでしょうか」と、並々ならぬ思いを打ち明けます。「敬意と自由。どちらも爆発させることが、役者としての自分の成長につながると思います」と、右近らしく表現しました。

 

 「黙阿弥の七五調の音程、音色、声の感じ。せりふという名の歌を歌うようなところに、僕はやられてしまいました。理屈がなくても楽しめ、理屈がわかったらもっと楽しい。自分がその魅力を存分に感じ、楽しみながら演じることで、観ている方に幸せな気持ちになってもらえるような舞台に」と、作品の魅力を紐解きながら、お客様への思いを何度も口にします。

 

 19歳で弁天小僧を初役で勤めた高祖父・五世尾上菊五郎へ、「10年遅れています、すみません。でも急ぎます」と、音羽屋の芸を受け継ぐ意欲を見せながら、「30代を前に、応援したくなる役者ではなく、引っ張っていく役者になることも意識したいです。それもまた歌舞伎座が育ててくださると信じています」と、晴れやかな笑顔で語りました。

 歌舞伎座「團菊祭五月大歌舞伎」は5月2日(月)から27日(金)までの公演。チケットは、チケットWeb松竹チケットホン松竹で販売中です。

2022/04/15