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猿之助、笑也が語る、歌舞伎座『當世流小栗判官』
7月4日(月)から始まる歌舞伎座「七月大歌舞伎」第一部『當世流小栗判官(とうりゅうおぐりはんがん)』に出演の市川猿之助、市川笑也が、公演に向けての思いを語りました。
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11年ぶりの小栗判官
『當世流小栗判官』は、昭和58(1983)年7月に三代目市川猿之助(現 猿翁)によって初演された、「三代猿之助四十八撰」の一つです。猿之助は、「初演は私が亀治郎として初舞台を踏んだ月だったのでよく覚えています。これは四十八撰のなかでも人気の狂言。ぜひご覧いただけたらと思います」と挨拶しました。近年では、平成23(2011)年10月に新橋演舞場で、当時亀治郎だった猿之助が小栗判官を初めて勤めて以来、11年ぶりの上演となります。
二人の間に置かれたパネルの写真は、実は11年前に撮影されたものを使用しているそう。猿之助は「これがとてもよかったので、今回、(デザイナーの)東學さんにリニューアルしてもらいました。(写真家の)渞忠之さんが、馬事公苑で撮った本物の馬の写真と合成してくれて…」と懐かしみます。平成5(1993)年7月以来毎回のように照手姫を勤めてきた笑也は、「涙が出ました、11年前。(猿翁と)そっくりなんですよ」と、当時を振り返りました。
限られた時間のなかで
今回のように、長い通し狂言を限られた時間のなかで上演する際の工夫を問われ、猿之助は「物語が伝わること、歌舞伎のお約束事を入れること」を念頭に調整する、と話します。「この作品だと、馬の碁盤乗り、浪七の切腹と引き戻し、橋蔵とのコミカルなやり取り、それから道行と天馬の宙乗り。これらは外せませんので残していく。すると、今度は拵えが大変で、早替りのような状態になるんですよね」。裏側の苦労を明かしつつも、みどころが凝縮された「いいとこどり」の舞台になる、とアピールします。
加えて、「猿翁さんは、道行の場面で文楽座のテープを使っていましたが、11年前に私がやらせていただいたときから、歌舞伎の義太夫で、出語りにしています。今回は竹本葵太夫さんにお願いします。また、人馬一体という、馬に乗ったままの宙乗りというのは、なかなかほかにない。馬が飛ぶのは、新しい歌舞伎座になって初めてなのではないでしょうか」と、眼目を伝えました。
1000回目の宙乗り
人生で最初の宙乗りが、まさにこの『當世流小栗判官』の舞台だったという笑也は、今回の公演初日の舞台で、女方としては最多となる、1000回目の宙乗りに挑みます。「『小栗判官』に始まって、『小栗判官』の初日に1000回を迎えるということで、非常に感無量でございます。でも、うちの師匠(猿翁)は5000回。すごいですよね…」と、感慨を込めます。
昭和58年の初演時は馬の後ろ脚を勤めた笑也。「馬が襖を跳び越える場面は、実は最初はうまく跳べなかった。初日から5日目の朝、馬がゆっくり垣根を跳ぶ夢をみて、それをヒントにやり方を考え、前脚だった市川猿十郎さんと稽古なしで跳びました。それが型となっています」と、笑也が朗らかに語るエピソードに、相槌を打つ猿之助からも笑みがこぼれます。
また、共演者について、猿之助は、「(寺嶋)眞秀くんは、純粋に才能を見て、ぜひと思いました。舞台が楽しい、という経験をしてもらいたいです。(尾上)右近くんは、情熱的なお駒にぴったりだと思う。矢橋の橋蔵は、芝居のなかに溶けこみつつ個性で笑わす役。それを(坂東)巳之助くんがどう料理するか。やってくれると思います」と、期待を込めました。
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歌舞伎座「七月大歌舞伎」は、7月4日(月)から29日(金)までの公演。チケットは、チケットWeb松竹、チケットホン松竹で販売中です。