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歌舞伎座「二月大歌舞伎」初日開幕
2023年2月2日(木)、歌舞伎座「二月大歌舞伎」の初日が幕を開けました。
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第一部は、『三人吉三巴白浪』。盗賊が活躍する「白浪物」を得意とした河竹黙阿弥が、同じ「吉三」の名をもつ三人の盗賊と100両の金を巡る因果話を、独特の絵画美と叙情美豊かに描き出した代表作の一つです。今回はみどころあふれる三幕五場を抜粋した構成での上演です。節分の夜更け。大川(隅田川)の川端にある庚申塚で、女に化けて盗みを働くお嬢吉三(七之助)が、夜鷹のおとせ(壱太郎)から100両の金を奪い取ります。お嬢が、「月もおぼろに白魚の…」から始まり「こいつぁ春から縁起がいいわえ」でしまる黙阿弥ならではの七五調の名ぜりふを披露すると、季節にぴったりの心地よい響きが、観客を一気に作品の世界へと引き込みます。
御家人崩れの悪党、お坊吉三(愛之助)が駕籠の中から現れ、お嬢吉三と100両の金を巡って争うと、その二人の仲裁に入ったのは、吉祥院の所化あがりの盗賊・和尚吉三(松緑)。貫禄ある和尚吉三の取りなしにより、同じ「吉三」の名を名のる縁から義兄弟の契りを結ぶことになります。この「大川端」での出会いを発端に、悪事を重ね、追われる身となった三人は、見えない糸で繋がっていたかのごとく、100両の金と名刀庚申丸を巡って数奇な運命に導かれていきます…。三人三様の盗賊の姿が観客の心を掴み、大きな拍手に包まれるなか幕を閉じました。
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第二部は、清元の舞踊『女車引』。本作は、歌舞伎三大名作の一つである『菅原伝授手習鑑』の名場面「車引」の登場人物を、それぞれの女房に置き替えた趣向のひと幕です。京の吉田神社の社頭で出会ったのは、松王丸の妻・千代(魁春)、梅王丸の妻・春(雀右衛門)、桜丸の妻・八重(七之助)。幕が開き、花道から春と八重が姿を現すと、場内がぱっと明るく華やぎます。続いて、上手から千代が現れ、三人は舎人である夫の仕事着を着て、車を引き合う様子を見せていきます。さらに「賀の祝」の料理を支度する様子を朗らかに踊り始める女房たち。仲良く舞う姿は陽気で楽しく、春を待ちわびるこの季節に相応しい舞台です。
続いて、五世中村富十郎十三回忌追善狂言として上演する、新歌舞伎十八番の内『船弁慶』。踊りの名手と言われた富十郎が得意とし、生涯をかけて演じた『船弁慶』の静御前と平知盛の霊を、富十郎の長男である鷹之資が、富十郎が使用していた長刀や衣裳とともに勤めます。前半のみどころである「都名所」の舞からは、静御前のしなやかな動きの一つ一つに源義経(扇雀)への思いがあふれ、観客の視線を引きつけます。やがて舟長三保太夫(松緑)の音頭で漕ぎ出した一行の前に、義経に滅ぼされた平知盛の霊が恨みを晴らそうとすさまじい勢いで迫り来ます。義経主従との対峙は緊迫感にあふれ、武蔵坊弁慶(又五郎)に祈り伏せられた知盛の花道の引っ込みは、渦潮とともに水底へ姿を消す壮絶な様子を描いています。約2メートルにもおよぶ長刀を華麗に振りかざす知盛。その大きさに、万雷の拍手が響き渡りました。
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第三部は、四世鶴屋南北の『霊験亀山鉾』を通し狂言として上演。藤田水右衛門と隠亡の八郎兵衛の2役を当り役とする仁左衛門が、今回の上演では監修もつとめ、一世一代と銘打って、本作を演じ納めます。序幕は、甲州石和宿のはずれ。兄を闇討ちした藤田水右衛門と巡り合った遠州浜名の家中、石井兵介(坂東亀蔵)が仇討ちを行うとあって、町人たちが噂しています。いよいよその刻限となっても余裕綽々の様子を見せる水右衛門は、仇討ちを前に交わす水盃に毒薬を仕込むという卑怯なやり口で兵介を殺害。開幕直後から、水右衛門が放つ“悪の魅力”が、観客の視線を釘付けにします。
さらに、水右衛門に瓜二つの隠亡の八郎兵衛が登場し、水右衛門との早替りを披露します。石井源之丞(芝翫)を水右衛門が返り討ちにする場面では、その悪党ぶりに美しさや色気を滲ませ、観客の心を奪います。「中島村焼場の場」では、八郎兵衛と、八郎兵衛が恋するおつま(雀右衛門)による雨が降りしきるなかでの臨場感あふれる立廻りや、八郎兵衛からの早替りで水右衛門が棺桶の中から現れるという南北ならではの奇抜な趣向が凝らされた舞台を展開し、一世一代の舞台に熱い拍手が送られました。
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歌舞伎座場内1階ロビーには、五世中村富十郎十三回忌追善の祭壇が飾られ、懐かしそうに写真を眺めたり、手を合わせるお客様の姿も見られました。
歌舞伎座地下2階の木挽町広場では、2月28日(火)まで、歌舞伎巡業公演地「北海道物産展」を開催しています。ご当地ラーメンや絶品お菓子など、数量限定で取りそろえていますので、ご観劇の際にはぜひお立ち寄りください。
歌舞伎座「二月大歌舞伎」は25日(土)までの公演。チケットは、チケットWeb松竹、チケットホン松竹で販売中です。