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仁左衛門が語る、歌舞伎座『義経千本桜』
2023年6月3日(土)から始まる歌舞伎座「六月大歌舞伎」夜の部『義経千本桜』「木の実・小金吾討死・すし屋」に出演する片岡仁左衛門が、公演に向けての思いを語りました。
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権太からにじみ出る「家族愛」
平成30(2018)年12月南座「吉例顔見世興行」以来、5年ぶりにいがみの権太を演じる仁左衛門。上演にあたり大事にしていることを問われると、「家族愛」と、迷うことなく答えます。「勘当されていても、やっぱり父親のことが好き。そして、子どもがかわいくて仕方がない。『木の実』では、子どもとお嫁さんの三人の家庭の温かみをお客様に伝えることで、後の『すし屋』での別れのつらさを、より感じていただけると思う」と、話します。
悪事を働きながらも、わが子の言葉には耳を傾ける権太の憎めない一面など、どのように家族愛を表現するかについては、「そこばかりに注目されてしまうので、詳しくは言いません」と笑い、「なにより雰囲気を大事にして演じています」と口にします。権太が長年寄り添った女房小せんを「みずみずしいなぁ」とほめるせりふについては、「そういった夫婦仲なんですよね」と、にこやかに語りました。
それぞれの型がある楽しみ
江戸と上方とで大きく型が分かれる「すし屋」。「上方でも、河内屋さんと成駒屋さんとで違います。父(十三世仁左衛門)もやっていますが、うちのやり方というのがあるわけではないので、私も私なりにつくっています。大事なのは、丸本物であることを基本にすること。丸本物の丸みを大事にしたいと思っています」。そう話す一方で、型を守っていくことについては、「気持ちを、心を守ることであって、幹がしっかりしていれば、枝はこれからも変わっていっていいと思う。同じ役であってもそれぞれの俳優のつくり方があるから、いろいろな楽しみがある」と、歌舞伎の魅力を語りました。
権太が本音を伝えられないまま父親に手をかけられてしまう場面で見せる、仁左衛門ならではの「間」については、「何度も演じているうちに変わってきました。紙一重のタイミングの差で、悲劇性、ドラマ性を強く訴えられる」と話します。「おそらく決まった段取りを追うだけでは、今のやり方は出てこなかったでしょう。結局は台本を読み返すこと、そして舞台を毎日新鮮な気持ちでやることが大事だと思います」と、毎回気持ちを新たに舞台を積み重ねてきた結果だと明かしました。
前回の南座での上演に続き、若葉の内侍を片岡孝太郎、主馬小金吾を片岡千之助が勤め、親子三代の共演となる本作。2度目の小金吾に挑む千之助については、「私は、小金吾を天王寺屋の兄さん(五世中村富十郎)から教わりましたが、難しい役です。気持ちのいい役でもあり、悲しく、つらい役でもあります。今回はどこまで成長してくれているか」と、孫の成長に期待を寄せながら、締めくくりました。
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歌舞伎座「六月大歌舞伎」は6月3日(土)から25日(日)までの公演。チケットはチケットWeb松竹、チケットホン松竹で販売中です。