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染五郎が語る、博多座「二月花形歌舞伎」

染五郎が語る、博多座「二月花形歌舞伎」

 

 2024年2月3日(土)に開幕する博多座「二月花形歌舞伎」に出演の市川染五郎が、公演に向けての思いを語りました。

15年憧れた夢が現実に

 「祖父(松本白鸚)と父(松本幸四郎)の初演の舞台を見た、3歳のときの記憶が今も残っているくらい、衝撃的でした」と、『江戸宵闇妖鉤爪(えどのやみあやしのかぎづめ)』との出会いを振り返った染五郎。「まさかこんなに早く演じさせていただけるとは」と、うれしさをかみしめます。学校の図書館の江戸川乱歩作品を片っ端から読むほどのめり込んだと言い、「乱歩作品ならではのダークでポップさもある雰囲気が好き。自分と趣味や感覚が共鳴しているように感じます。また祖父の演出や世界観が好きで、この作品もそういった祖父らしさがある。人間豹の衣裳やモノトーンの隈取など、歌舞伎らしい派手さをいい意味でそぎ落としているところも好きです」と、“好き”が詰まった本作への思いをあふれさせました。

 

 染五郎は、人間豹・恩田乱学と、人間豹に狙われる女性の恋人・神谷芳之助の2役を勤めます。「恩田は正体不明な雰囲気が魅力です。マントを翻しながらワイヤーで移動する場面はかっこいいですし、宙乗りに向かって大詰で盛り上がっていくところが一番好きですね」。初めて挑む、一人だけの宙乗りやワイヤーアクションについては、「実は高いところが苦手なのですが…」と明かしながらも、「どんな感覚なのだろうと楽しみです」と、気合十分です。

 

 「ここはこうしたい、というアイディアが、これまで憧れてきた15年分、自分のなかに蓄積されています。とにかく思いついたことは父とその都度共有し、実際にそのアイディアが使えるかどうかや、父の案についても話してくれる。祖父の『人間豹』を大切にしながら、ブラッシュアップしたいですね」。「役について父と話すときは、芝居に描かれていない、その人生や背景まで考えた解釈を共有してくれるので、人物としてとらえやすいです」。親子で目を輝かせながら、芝居について話し合っている様子が目に浮かぶようです。

 

染五郎が語る、博多座「二月花形歌舞伎」

 

また観たいと思っていただけるように

 もう一つの上演演目『鵜の殿様』については、「鵜飼いを演じるためには、パントマイムのような技術が必要です。しっかり稽古をして、父と息の合った作品にできるようにしたいと思っています」と、目標を掲げます。さらに、「一つひとつの振りにどのような意味があるかを考えないと歌舞伎俳優が踊る踊りにならない。歌詞を理解し、あくまでもその歌に乗って動く。歌舞伎舞踊の根本的なところを意識しています」と、舞踊を勤める際の心がけについても言及しました。

 

 近年、舞台へ出演機会が増えた染五郎。「新しい作品づくりにも興味がありますが、やはり古典の作品が好き。新作歌舞伎などは、古典作品をきちっとできる歌舞伎俳優が演じるからこそ歌舞伎になるのだと思います。経験が何よりもプラスになるので、古典の大きな作品の場数を踏ませていただけることはありがたいですし、1滴もこぼさず吸収したい。今を大切にしたいし、今の自分自身から一番刺激を受けていたい。今を積み重ねて、どういう自分になっていくか楽しみです」と、“自分の今”と真摯に向き合います。

 

 初めての博多座出演に向けて、「(博多のお客様は)お芝居として深くしっかり観てくださっているように感じます。博多の皆様にまた観たいと思っていただけるように、そして博多座さんの25周年を飾れるように、頑張りたいと思います」と、やる気を込めます。「乱歩先生のダークな世界観を歌舞伎に落とし込んだ『江戸宵闇妖鉤爪』と、ガラッと雰囲気が異なるコミカルな楽しい舞踊の『鵜の殿様』。私が演じる2作品での役の対比もお見せできたら」と、抱負を語りました。

 博多座「二月花形歌舞伎」は、2月3日(土)から18日(日)までの公演。チケットは12月9日(土)より、博多座オンラインチケット、電話予約センター、劇場窓口ほかで発売予定です。

2023/11/21