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幸四郎、京極夏彦が語る、歌舞伎座『狐花』

幸四郎、京極夏彦が語る、歌舞伎座『狐花』

 

 2024年8月4日(日)から始まる歌舞伎座「八月納涼歌舞伎」第三部『狐花 葉不見冥府路行』に出演の松本幸四郎、脚本の京極夏彦が、公演に向けての思いを語りました。

幸四郎、京極夏彦が語る、歌舞伎座『狐花』

 

新たに誕生する“京極歌舞伎”

 「八月納涼歌舞伎」第三部では、小説家デビュー30周年を迎える京極夏彦が、このたびはじめて歌舞伎の舞台のために書き下ろした『狐花 葉不見冥府路行』が上演されます。江戸を舞台に幽霊事件の謎を描いた本作では、大人気小説「百鬼夜行」シリーズの主人公・中禅寺秋彦の曽祖父で今回の主人公となる、中禪寺洲齋を幸四郎が勤めます。 

 

 「京極さんの作品を歌舞伎で上演することは、“夢の夢の夢”だと思っていました。実現するときが来て、本当に興奮しています」と、口火を切る幸四郎。「京極さんの作品は、小説でありながら、優しく、怪しく、艶っぽい音楽が聞こえてくるような感覚があります。(台本を)初めて読んだときには、せりふ劇に音楽が乗っている、シェイクスピアのような、世話物ではない世界観が思い浮かびました。“京極歌舞伎”という、新たな歌舞伎をつくる姿勢で取り組みます」と、意気込みを見せます。

 

 日頃から歌舞伎や浄瑠璃の台本などを読んでいるという京極。「歌舞伎の舞台の間合いや所作などは、中禅寺秋彦のせりふのリズムに強い影響を与えていると思います。ほかの人物とは違い、歌舞伎の“間合い”に近いものをもつように造形されているので、今回その曾祖父の登場も必然的だったかなと。自分が歌舞伎を書く意味を考え、これまでの仕事を反映させた方が、より受け入れてもらえるのではないかとも思い、中禪寺を主人公に選びました」と、語ります。

 

幸四郎、京極夏彦が語る、歌舞伎座『狐花』

 

色彩や音楽を感じて

  幸四郎は「歌舞伎の型にはめ込んでいくのではなく、京極さんの『狐花』という作品自体を歌舞伎として観ていただけるように挑戦したい。京極さんの作品からは、歌舞伎の絢爛豪華さとは違う美しさと、色彩を感じます。道具や明かりなども、どれだけ自由に発想できるか工夫したいです。歌舞伎には、気持ちを感情のまま表現しない部分もあり、音楽的、色彩的な京極先生の世界観は必然だと感じています。書いていただいたせりふを、生の言葉としてどう伝えるかもこだわりたい」と、抱負を述べます。

 

 『狐花』は、小説としても7月26日(金)に出版予定です。「小説を先に書きましたが、歌舞伎は役者さんの身体と舞台という装置があって完成するものですので、舞台を前提に書くのは難しかったです。小説には必ず視点人物がいますが、舞台は観客視点で書かないと成り立たない。いつもより時間をかけて書きましたので、幸四郎さんたちによって完成するのが楽しみです。歌舞伎でないとできない仕掛けも考えました」と、明かします。

 

魅力ある伝統

 「執筆の途中で配役を知り、プレッシャーと、この方々ならきっと立派にやっていただけるので安心だという思いと、相反する気持ちが同時に湧きました。僕の小説はせりふが多くて、特に主役の人は申し訳ない気持ちがありますが…」と、語る京極。幸四郎は、「僕はまず作品を楽しむ気持ちで読ませていただいたあと、歌舞伎の新作としてどう誕生するかと妄想を膨らませていました。役を引き寄せるところもあるかと思いますが、まずはその世界に自分が飛び込み、変身するという気持ちで取り組みたい」と、力強く答えました。

 

 「伝統というのは時代に合わせて変わっていってこそのものです。歌舞伎はその時代の空気や、文化や、観ている人たちの気持ちを汲める芸能。届けやすく、わかりやすく、面白い、ということに特化できる伝統で、ものすごく魅力があると思います。ハードルが高いイメージがあるかもしれませんが、もっと多くの方に観てほしいし、楽しんでもらいたい」と、京極が語り、締めくくりました。

 歌舞伎座「八月納涼歌舞伎」は8月4日(日)から25日(日)までの公演。チケットは、チケットWeb松竹チケットホン松竹で販売中です。

2024/07/17