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幸四郎、隼人が語る、歌舞伎座『大富豪同心』
2025年1月2日(木)から始まる歌舞伎座「壽 初春大歌舞伎」夜の部『大富豪同心』に主演する中村隼人、出演・演出を勤める松本幸四郎、演出・振付の尾上菊之丞が、公演に向けての思いを語りました。
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人気シリーズ作品を歌舞伎座で
「壽 初春大歌舞伎」では、平成22(2010)年の出版以来人気を集める時代小説、「大富豪同心」を原作にした新作歌舞伎が上演されます。幸四郎が、歌舞伎座では初めてとなる演出を勤め、菊之丞が演出・振付を担当します。また、令和元(2019)年からNHKのBS時代劇として放送され、シリーズの主人公の八巻卯之吉と幸千代の2役を演じてきた隼人が、歌舞伎座でも同役を勤めます。
幸四郎は、「ドラマにも楽しく参加させていただきましたが、娯楽時代劇として本当に面白く、隼人くんがこの作品に出会ったのが素敵なことだなと感じました。今回歌舞伎座で演出をさせていただくにあたり、隼人くんここにあり、というものをつくれるように。二枚目ですが、お茶目で愛嬌があって、お殿様でもあって…。歌舞伎の演目ではあまりない役どころだと思いますので、彼がこういうものをもっているのだと驚いていただけるよう、引き出していきたいです」と、抱負を語ります。
隼人は、「まさか、新春浅草歌舞伎を卒業した翌年の1月に歌舞伎座で上演させていただけるとは…。お話をいただいたときには喜びとともに、『大富豪同心』の世界観をどこまで歌舞伎で表現できるか不安もありました。でも、演出の幸四郎兄さん、演出・振付の菊之丞先生と、尊敬しているお二人に入っていただきとても心強く、今は不安よりも期待が勝っています。かれこれ5年ほど育ててきた役です。どのように歌舞伎作品に落とし込めるか、今からとても楽しみです」と、やる気を見せました。
こだわりの演出や踊り
隼人は「周りの人たちに支えられ、一致団結して一つのことに取り組む、ということがこの作品のテーマの一つだと思っています。刀を見るだけでも気絶してしまう卯之吉は、ほっておけない、自然と周りに人が集まってくる人物。人の気持ちや痛みがわかる人物像があってこそ、現代的な感覚で令和の時代劇として楽しんでいただけているのでは。両親と幼い頃に別れ、影の部分もある人間ですが、そんな彼が、(中村)壱太郎さん演じるヒロインの美鈴や、幸四郎兄さん演じる荒海ノ親分、周囲の人の優しさ、温かさに触れて人間として成長していくところが魅力だと思います」と、大切に演じてきた役への思いを口にします。
今回の演出の眼目として「踊り」と「早替り」を挙げた三人。菊之丞は、「この作品はドラマのなかでも最後に踊りの場面があります。役と、役者の中間の姿とでも言いましょうか、そのような雰囲気をエッセンスとして取り入れながら、物語のなかにうまく溶け込む楽しい振りがつくれたら。お正月公演で一番最後に上演されるものですので、楽しい気分でお帰りいただけるような踊りをお見せしたいです」と、新年の公演ならではのこだわりを述べます。
隼人が勤める八巻卯之吉と幸千代の2役については「顔が似た人の早替りは、あまり歌舞伎では見られない展開です。顔はそっくりそのまま2役を演じるという部分を、どうつくるか…現在のところ早替りは11回を予定しています。速さも大切になると思いますので、テンポを良くつくっていきたいです」と、幸四郎が構想を明かし、「11回?!」と隼人らの驚きを誘うひと幕も。さらに隼人が「やはり、みどころとしてはドラマでも演じている卯之吉の気絶も挙げられるかと(笑)どのようにやるのか…」と、本作ならではのユニークな設定にも触れます。
全身全霊でいいものを
江戸の侠客、荒海ノ三右衛門を演じる幸四郎は、自身の役について「とにかく、もう卯之吉ラブという人物ですので(笑)、それをどれだけ前面に出せるか、暑苦しいほどの情熱を表現できればと思います」と、演出に加え、芝居への期待も膨らみます。
「隼人さんのお若いころからご一緒させていただくなかで、今回お手伝いできることが本当うれしいです。早替りの手腕もしっかり見届けたい」と、期待を込める菊之丞の言葉を受け、気合を入れなおす隼人。「僕の役者人生に大きな影響を与えた作品ですので、とにかく妥協なく全身全霊でいいものをつくりたい。TVのシリーズもパート3まで続いて、今月末にはスペシャルが放送されます。ここまで皆様に愛していただいてきた作品ですので、それを汚すことのないように、皆と協力しながらつくっていければと思います」と、新しい年の幕開けに向けて、気持ちを込めました。
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歌舞伎座「壽 初春大歌舞伎」は、2025年1月2日(木)~26日(日)までの公演。チケットは、チケットWeb松竹、チケットホン松竹で発売中です。