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歌舞伎座「壽 初春大歌舞伎」初日開幕

 

 

 1月2日(水)、歌舞伎座「壽 初春大歌舞伎」の初日が幕を開けました。

 平成最後の正月、縁起物の三番叟で幕を開けた歌舞伎座。魁春の千歳、芝翫の三番叟が舞台に現れ、『舌出三番叟』が始まりました。三番叟の大地を力強く踏みしめる音が響き渡り、千歳はゆったりと祝祭の舞を見せます。五穀豊穣を祈る厳かで儀礼的な踊りのなかにも、婚礼の支度の様子を面白く当て振りで踊ったり、松竹梅を描いた衣裳を見せたりして楽しませます。「千穐万歳、万々歳の末までも、賑わう御代とぞ舞い納む」と二人がきっちりきめると、歌舞伎座にすがすがしい空気が満ち満ちました。

 

 正月を寿ぐ曽我狂言、歌舞伎座は『吉例寿曽我』を上演します。雪景色の箱根権現に参拝すると聞き、親の敵の工藤祐経を討とうとやって来た、七之助の一万と芝翫の箱王の曽我兄弟。呼び出されて初春の吉例にと、春駒の門付を披露します。しかし、御簾の内にいたのは、祐経ではなく奥方の梛の葉(なぎのは)でした。昨年、約5年ぶりに舞台復帰を果たした福助の再びの登場に、待ってましたの声もかかります。大名たちが居並ぶお馴染みの『対面』とは異なり、女方がずらりとそろう華やかなひと幕です。

 

 餅つきに門松、鏡餅に繭玉と正月らしさ満載の『廓文章』。幸四郎が昨年の御園座の襲名披露で初めて見せた伊左衛門の、東京初披露です。「紙衣ざわりが荒い、荒い」と東蔵の喜左衛門をたしなめ、深編笠から顔を出すと大拍手。座敷への鮮やかな場面転換もあって、夕霧を待ちながら伊左衛門が清元に合わせて三味線をつま弾くところまで、心浮き立つ時間が続きます。待ち焦がれた夕霧の登場にもすねたり怒ったり、なんのてらいもない伊左衛門。七之助初役の夕霧は豪華な衣裳に負けない美しさで、二人のじゃれつく姿はまさに絵を見るよう。最後に秀太郎のおきさが吉報を持ち込み、大阪締めでめでたく幕を降ろしました。 

 

 白鸚が47年ぶり2度目の大蔵卿を勤める『一條大蔵譚』。御所の扉に顔を出してから花道に引っ込むまで、大蔵卿が見せる阿呆ぶりにはわかっていてもついだまされ、だからこそ、花道で鬼次郎を見つけて顔色を曇らせたとき、思わずはっとさせられます。「奥殿」で長刀を見事にふるう姿に本性を見せ、「命長なり、気も長なり、ただ楽しみは狂言舞」に込められた哀しみに、勘解由の首を手にしての表情。魁春の常盤御前に、その本心を探ろうとする梅玉の鬼次郎、雀右衛門のお京夫婦と顔がそろい、見ごたえ十分の昼の部の打ち出しとなりました。

 『絵本太功記』は光秀の息子、幸四郎の十次郎が初陣に赴くのを、許嫁の米吉の初菊と、光秀の母、東蔵の皐月と、妻の雀右衛門の操が嘆きます。女方の三人がそれぞれの役柄の違いをくっきりと出しました。戦の裏側のドラマが描かれたところで、満を持して光秀が登場。蛙の鳴き声が響く中、異様なたたずまいで現れた吉右衛門の光秀。母に人非人とそしられても己を貫く信念の強さと、手負いの子に対する武士としての厳しさのなかでの大落としに、心揺さぶられずにはいられません。竹本の語りと三味線に乗せた運びが、義太夫狂言の醍醐味を伝えて余りあるひと幕です。

 

 『勢獅子』は曽我兄弟こそ出ませんが、粋な鳶頭が兄弟の仇討ちの様子を見せる踊りで、曽我祭とも呼ばれていました。鳶と手古舞のかっぽれに続き、梅玉、芝翫の鳶頭による曽我の仕方噺や、くねくねと肩を動かすぼうふらの踊り、魁春、雀右衛門がそろう艶やかな芸者の踊り、愛嬌たっぷりの身づくろいや切れのよい動きで場内を沸かせた獅子舞。最後は総踊りで賑やかに、ぐっと正月気分を盛り上げました。

 

 切は『松竹梅湯島掛額』、猿之助の紅長(べんちょう)こと紅屋長兵衛が大活躍、おっとり美人の八百屋のお七を助けます。左甚五郎の彫った天女に似ているからと、紅長が吉祥院の欄間に隠したのが七之助のお七。お七が惚れる凛々しい前髪の吉三郎は幸四郎。二人を逃がすために紅長がお土砂をかけ、追手たちがぐにゃぐにゃとやられる姿に場内大爆笑です。

 

 昨年の流行語を入れたり、同じせりふと振りを繰り返して見せるおうむを入れたり、米づくしのせりふがあったりと、寒さを吹き飛ばす初笑いに沸いたあとは、お七が重罰をも恐れぬ恋心を人形振りで見せます。降りしきる雪をも溶かすお七の熱い思いが、火の見櫓の太鼓とともに胸を打ち、初芝居の幕とともにお客様の熱気が東銀座の街にあふれ出しました。

歌舞伎座「壽 初春大歌舞伎」初日開幕

 芝居の前後には、正月飾りで賑やかな木挽町広場へどうぞ。入口には毎年恒例の「啓翁桜(けいおうざくら)」もお目見得、ちらほらとつぼみを開かせて初春の訪れを感じさせています。

 

 歌舞伎座「壽 初春大歌舞伎」は1月26日(土)までの公演。チケットは、チケットWeb松竹チケットホン松竹で販売中です。

2019/01/03