歌舞伎いろは

【歌舞伎いろは】は歌舞伎の世界、「和」の世界を楽しむ「歌舞伎美人」の連載、読み物コンテンツのページです。「俳優、著名人の言葉」「歌舞伎衣裳、かつらの美」「劇場、小道具、大道具の世界」「問題に挑戦」など、さまざまな分野の読み物が掲載されています。



 

私と歌舞伎座 〜変わらぬ歌舞伎のダイナミックさを未来へ

 松本幸四郎さんが子供だった頃、歌舞伎座は銀座ならではの賑わいに包まれていたそうです。
 「寿司職人が桶を持って来て楽屋で握っていた光景を憶えています。和菓子屋さんがおはぎを作って売りに来たりもしていました。たくさんの商店や飲食店がある銀座ならではの空気が劇場にも楽屋にも満ちていましたね。今のように女性スタッフも多くなくて、床山から衣裳から楽屋は男性ばかりでした。時代は昭和、平成と移り変わりましたが、江戸前の活気を感じる場所です」
 生まれ変わる歌舞伎座。その未来に幸四郎さんは歌舞伎の未来を重ねます。
 「劇場が新しくなっても、我々は最高の歌舞伎を演じ続けるだけです。時代を超えて変わらぬ日本人の心を表現し続けてきたのが歌舞伎ですから、今を生きる自分たちが作り出せる最高の感動を常に届けたいと思っています」
 

九代目松本幸四郎

1942年生まれ。3歳で東京劇場『助六』の外郎売りの倅にて松本金太郎を名乗り初舞台。6歳の時、『逆櫓』の遠見の樋口で六代目市川染五郎を襲名。1971年にはニューヨーク・ブロードウェイで『ラ・マンチャの男』を、1990年にはロンドン・ウエストエンドで『王様と私』を日本人初の英語で単独主演。1981年10月、11月、39歳で歌舞伎座にて『勧進帳』の弁慶、『寺子屋』松王丸、『熊谷陣屋』熊谷、『助六曲輪江戸桜』助六で九代目松本幸四郎を襲名する。古典作品の登場人物を深く掘り下げ、静けさの中に深い情感のこもった演技で『元禄忠臣蔵』の大石内蔵助や重厚な時代物の他に『魚屋宗五郎』『髪結新三』といった世話物も高い評価を得ている。昨年は新作『江戸宵闇妖鉤爪(えどのやみあやしのかぎづめ)で明智小五郎を演じ、九代琴松の名で演出も担当。4月には帝国劇場で『ラ・マンチャの男』1100回を達成し、10月には奈良東大寺において『勧進帳』弁慶1000回を達成した。


私と歌舞伎座

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