歌舞伎いろは

【歌舞伎いろは】は歌舞伎の世界、「和」の世界を楽しむ「歌舞伎美人」の連載、読み物コンテンツのページです。「俳優、著名人の言葉」「歌舞伎衣裳、かつらの美」「劇場、小道具、大道具の世界」「問題に挑戦」など、さまざまな分野の読み物が掲載されています。



2008年八月納涼大歌舞伎の稽古風景。
写真撮影:篠山紀信、写真協力:「家庭画報」

歌舞伎座さよなら公演八月納涼大歌舞伎 平成21年8月8日(土)~27日(木)
上演時間
演目と配役
みどころ
 

次の100年へ
 ~さよなら公演は歌舞伎の新しいスタート

  第二部で踊る『船弁慶』では、静御前の衣裳を二着用意し交互に用いる予定。一着は坂東玉三郎丈から襲名のお祝いにプレゼントされたもの。そしてもう一着の衣裳には奇跡とも言える物語があります。
  「3年ほど前に麹町の骨董屋さんから私に連絡があったんです。聞いたら、六代目菊五郎が『船弁慶』を踊った時の衣裳があるって言うじゃないですか。すぐに駆けつけましたよ」
  衣裳は今から80年前、英国王の第三王子・グロスター公が国賓として来日した際に踊った時に着たものでした。
  「箱書にちゃんと、グロスター公来日の際にと書いてありましてね。よくそんな貴重な衣裳が、僕の元に来てくれたと…『義経千本桜』四の切の狐忠信ではないですけれど『我が手にきたや、うれしやな』ですよ。もちろん歌舞伎座でその衣裳を纏い踊るのは初めて。(今の歌舞伎座の)最後の年にこんなに嬉しいことはありません」
  第三部では平成2年の納涼歌舞伎で上演し大好評を博した『怪談乳房榎』で早替りを勤めます。
  「体力勝負ですから。身体が自由に動くうちに是非と思いまして」
  四役早替りにて相勤め申し候。とあるが、役名は三役しか発表されていません。一体…?
  「四つ目の役は、皆さんご覧になった時に『なるほど?』と言っていただけるよう趣向を凝らしています。ヒントを申し上げると、納涼歌舞伎ではおなじみとも言える役柄であること。その登場人物には、私が20年立ち続けた歌舞伎座8月の舞台への感謝の気持ちを託しています。楽しみにしていてください」
  4年後、新しくなった歌舞伎座での八月納涼歌舞伎を早くも楽しみにしています。
  「歌舞伎役者は死ぬまで役者です。この納涼歌舞伎をずっと続けていきたい。そうして歌舞伎座の熱気ある8月公演が50年後、100年後…私がいなくなった後も続いていって欲しい。歌舞伎座さよなら公演は、次の時代へのスタートだと思っています。100年以上は持つ、しっかりした劇場を作って欲しいですよね」
  歌舞伎座は、俳優・中村勘三郎を育ててくれたもうひとつの家です。劇場のそこここに、働くスタッフひとりひとりに沢山の思い出があります。

私と歌舞伎座

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