歌舞伎いろは

【歌舞伎いろは】は歌舞伎の世界、「和」の世界を楽しむ「歌舞伎美人」の連載、読み物コンテンツのページです。「俳優、著名人の言葉」「歌舞伎衣裳、かつらの美」「劇場、小道具、大道具の世界」「問題に挑戦」など、さまざまな分野の読み物が掲載されています。



歌舞伎座さよなら公演七月大歌舞伎 平成21年7月3日(金)~27日(月)
上演時間
演目と配役
みどころ
 

歌舞伎俳優の生き方
 ~舞台写真が教えてくれること

 長い年月の中で練り上げられてきた芸を受け継ぎながらも、自分と同時代を生きるお客様の心により響く芝居を―。中村吉右衛門さんは常に、歌舞伎の魅力と対峙しながら舞台を踏んでいます。
 「九月大歌舞伎の『時今也桔梗旗揚』のような、光秀の人物ドラマを描きながらも、きらびやかな衣裳や大道具の魅力、役者が大見得をした時の爽快感が全て入っているのが“歌舞伎味”、歌舞伎にしかない面白さです。それを自分が生きる時代でいかに感じていただけるか。時代性というものを意識しています」
 今回、初代の“空気”を感じていただけたら、と『時今也桔梗旗揚』光秀のブロマイドをお借りし、掲載しました。
  この他にも初代吉右衛門はブロマイドや舞台写真が多く残っています。これらの写真から感じる空気とは。
 「ブロマイドは舞台でしない型で撮影したものもあるので、ちょっと違うのですが…。拝見して驚くのは、舞台面の写真ですね。資料用に撮影されたのでしょうか、時々残っているんですよ。例えば九代目市川團十郎さんの『暫』を舞台の後ろから撮影した写真を見たことがあるのですが、舞台でしている見得と、ブロマイド用に撮影した時の見得が全く同じかたちをしているんです」
 舞台だからといってやりすぎてもいけない、撮影だからといって気持ちが軽くなってもならない。“常に型ができる”すごさは、役者であるからこそ受ける感動だと言います。
 「初代の場合、舞台写真は少ないのですがブロマイドは比較的多く残っています。見ていますと、舞台でなくとも侍は侍、年寄りは年寄りと全て役を仕分けて撮影していますね。そこから役の持つ“空気”のようなものを感じております」
 受け継ぐ芸、歌舞伎が持つ空気、そしてなにより初代からは俳優としての生き方、心を受け継ぎました。
 「舞台を勤める上では毎日が初日である、ということを初代が口ぐせのように言っております。初日というのは俳優にとって大きな勝負です。今日、当たらなければ…という緊迫した思いがあります。その緊張感をひと月の公演中ずっと保つようにしなさいということです。そして千穐楽は初日に立ち戻ったつもりで、と。初代は俳句をたくさん残していますが、中には枯れた蓮の花が動く様を見て、ある芝居の台詞が浮かぶとか…。四六時中芝居のことを考えていた人でした」
 四六時中芝居のことを考えても、まだまだ満足いく芝居はできないと言い残したまま逝った先代。当代の中村吉右衛門さんもインタビュー中、もっと芝居の核を伝えるには、もっと歌舞伎らしい表現をするにはと芝居に深い思いを巡らせるお話が絶えません。
 

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