歌舞伎いろは

【歌舞伎いろは】は歌舞伎の世界、「和」の世界を楽しむ「歌舞伎美人」の連載、読み物コンテンツのページです。「俳優、著名人の言葉」「歌舞伎衣裳、かつらの美」「劇場、小道具、大道具の世界」「問題に挑戦」など、さまざまな分野の読み物が掲載されています。



 
歌舞伎座さよなら公演吉例顔見世大歌舞伎通し狂言 仮名手本忠臣蔵平成21年11月1日(日)〜25日(水)
上演時間
演目と配役
みどころ
 

生命を持ち続ける芸
 〜歌舞伎が現代を生き続けるために

 10月の御園座ではご子息の孝太郎さんのお軽で「道行」「五・六段目」を。 11月の歌舞伎座さよなら公演でも孝太郎さんとは「四段目」で共演なさいます。次の世代へと芸を伝承していくために―

 「先輩方が残してくださったものを、次の世代にきちんと残していくことができるのか。正直に申し上げると、恐いと感じることすらあります。自分自身のこともそうです。これまで先輩から教えていただいたことを勉強しながら、自分なりに考えもするし、精進をしてきました。けれどもまだ完璧に受け継いでいる、とは言えないと思っています…」

 芸は論理や言葉だけでは伝わらない。自身の肉体を通して何を残せるのか。

 「歌舞伎の芸は役柄それぞれの肚、そして台詞ひとつとっても頭だけで理解して覚えられるものではありません。自分の身体に叩き込んで、理屈を超えたところでやっと掴めるものです」

 次の世代へ。稽古を通して一番に伝えていることは…。

 「こころ、です。その役がどんな人生を生きて、どんなこころを持ってそこにいるのか。それをしっかりと次の世代に渡していきたいと思っています。台詞まわしにしても、七五調を美しく言えばいい、というわけではありません。かつての名優たちの台詞をレコードで聞いていると、流れるような台詞がしっかりと写実な会話になっているのが伝わってきてハっとするんです。まず、こころ。それを身体に刻み込んでいかなければ」

 孝太郎さん、孫の千之助さん、一門の若い俳優たちに松嶋屋の芸と魂を。 幼いながらもめきめきと役者としての存在感を光らせる千之助さんは、今月23日、池袋の東京芸術劇場で野田秀樹さんの芸術監督就任・提携公演、田中傳左衛門さんプロデュース『歌舞伎の未来』に出演します。千之助さんは口上と舞踊『五條橋』を。仁左衛門さんは特別に「ご挨拶」をなさいます。

 「まだ幼いものですから『口上をちゃんとできるかなあ』と本人は心配しているようですが、多くのお客様に観ていただく機会を少しでも多く重ねて、観客の皆さんと舞台からこころを分かち合える俳優になってくれたらいいですね」
 

私と歌舞伎座

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