歌舞伎いろは

【歌舞伎いろは】は歌舞伎の世界、「和」の世界を楽しむ「歌舞伎美人」の連載、読み物コンテンツのページです。「俳優、著名人の言葉」「歌舞伎衣裳、かつらの美」「劇場、小道具、大道具の世界」「問題に挑戦」など、さまざまな分野の読み物が掲載されています。



 

私と歌舞伎座 〜「さよなら」ではなく、新しい門出に期待

 「『曽根崎心中』『河庄』と、歌舞伎座さよなら公演で上方歌舞伎を演らせていただいて嬉しく思っているのですが、実は私自身は歌舞伎座とお別れするような気持ちはしないんですよ。劇場が変わるというよりも、お客様にもっとよく芝居を観ていただけるように歌舞伎座が生まれ変わるという感じで今から楽しみです」

 4月公演では、第1部『一谷嫩軍記』で熊谷の妻相模、第2部『藤娘』で藤の精を演じられます。

 「私は歌舞伎役者ですからいつも歌舞伎を演じているのが当たり前。今の歌舞伎座でも新しい歌舞伎座でも、勤める役の人生を生き、そのこころをお客様と分かち合えたら幸せです。4月のお役を勤めて歌舞伎座とお別れではなく、きっと3年後に出演のお話をいただいた時に、そういえば歌舞伎座久しぶりだな、と思うような気持ちで過ごしていたいですね。そして3年後に、新しい歌舞伎座の舞台を踏めるよう、ますます元気でいたいです」

 芝居に、そして役にかける情熱の火は決して消えることがない。歌舞伎座への想いも同じこと。これからも歌舞伎座を愛する心の灯はともり続けます。
 

坂田藤十郎

1931年12月31日生まれ。1941年10月、大阪角座『山姥』の金時で二代目中村扇雀を襲名し初舞台。1990年11月歌舞伎座『吉田屋』の伊左衛門、『河庄』の治兵衛で三代目中村鴈治郎を襲名する。近松座を創始して29年 。近松門左衛門作品の上演をライフワークとし、役、台詞ひとつひとつの深い解釈によって心に染み渡る魅力を引き出し続けている。2001年には近松座20周年記念公演で『心中天網島』を、また英国で『曽根崎心中』を上演。2006年1月に歌舞伎座の坂田藤十郎襲名披露公演を勤め、東京での上方歌舞伎上演にも熱を注いでいる。立役、女方ともに独特の柔らかさと華のある若々しさがあり、2008年に歌舞伎座で勤めた『京鹿子娘道成寺』でその芸の極みを表現した。同じく2008年には高松宮殿下記念世界文化賞を受賞。歌舞伎と国内外の文化に大きな貢献を果たした実績は大きく評価されている。1990年紫綬褒章、2003年文化功労者、2009年文化勲章受章。 重要無形文化財保持者(人間国宝)、日本芸術院会員。

私と歌舞伎座

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