歌舞伎いろは

【歌舞伎いろは】は歌舞伎の世界、「和」の世界を楽しむ「歌舞伎美人」の連載、読み物コンテンツのページです。「俳優、著名人の言葉」「歌舞伎衣裳、かつらの美」「劇場、小道具、大道具の世界」「問題に挑戦」など、さまざまな分野の読み物が掲載されています。



『七代目中村芝翫襲名披露口上』より、芝翫さんと児太郎初舞台の福助さん。(昭和42年4月歌舞伎座)
『戻橋』扇折小百合実は愛宕山の鬼女の芝翫さんと、渡辺綱の橋之助さん。(平成6年10月歌舞伎座)

新たな挑戦
 〜家族とともに作る、歌舞伎の未来

 幼い頃から過ごした歌舞伎座は、ご自身の初お目見得、襲名披露、また家族の初舞台、襲名を行った思い出深い場所でもあります。

 昨年12月の「歌舞伎座さよなら公演」では、6人のお孫さんと共演した舞踊『雪傾城』が大きな話題となりました。

 「私自身が一人っ子だったものですから、若い時はこんなに家族が増えるとは想像もしませんでした。本当に嬉しいことです」

 「息子の初舞台や襲名公演よりも、孫の時の方が落ち着いていられましたね。孫はかわいいのだけれど、舞台で共演する時は、子どもよりは距離があります。昨年末に『雪傾城』を演じた時もそうでした。まだ幼い孫ですと途中でちょっと大丈夫かな、と思うところがあるものですが、心配せずに観ていられました。福助は 毎日のように舞台の袖から息子や甥たちを観ていたようですよ。かなりハラハラしていたのではないでしょうか(笑)」

 芝翫さんも、息子さんの舞台を緊張しながら見守った思い出があります。

 「私の芝翫襲名で福助(当時児太郎)が初舞台の時は本当にドキドキしました。福助とは女方同士だからでしょうか、今は比較的安心感があるのですが、橋之助とはなかなか慣れません(笑)。以前『戻橋』を勤めさせていただいた時は、自分の出番前に、揚幕の隙間から本舞台の橋之助を観ているだけで“大丈夫だろうか…”と緊張しましてね。舞台が終わると半分冗談で“もうお前と出るのは嫌だ”と言っていたくらいです(笑)」

 子へ、そして孫へ。芸の継承が歌舞伎に新しい命を吹き込んでいきます。お孫さんと共演する時はどのような稽古をしているのでしょうか。

 「最初から最後までべったりとついて教えるということはありません。8割がたできたところで、大切なことを言うようにしています。踊りでも芝居でも、基本は他の方が教えてくださる方が子供はよく吸収します。歌舞伎の世界では他の家の先輩から芸を教わることも多いですし、その中で礼儀や芸の厳しさを知ることもあります」
六人の孫との共演『雪傾城』芝翫さんの傾城魁(中央)。右から国生さん、勘太郎さん、児太郎さん。左から宗生さん、七之助さん、宜生さん。
(平成21年12月歌舞伎座)  撮影:松竹株式会社

私と歌舞伎座

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