歌舞伎いろは

【歌舞伎いろは】は歌舞伎の世界、「和」の世界を楽しむ「歌舞伎美人」の連載、読み物コンテンツのページです。「俳優、著名人の言葉」「歌舞伎衣裳、かつらの美」「劇場、小道具、大道具の世界」「問題に挑戦」など、さまざまな分野の読み物が掲載されています。



ふっくらとした実と程よい酸味 希少な皆平早生梅のシンプルなしそ漬梅

 すでに江戸時代には広く庶民にも親しまれていたという梅干。みかん船で有名な紀伊国屋文左衛門は、紀州からみかんだけでなく、梅干も運んで大きな利益を得ました。紀州の梅は当時から「美味しい」と名声を博していたようです。

 その紀州の中でも、ごく一部の地域のみで守り続けられてきた梅があります。それが「知る人ぞ知る」という皆平早生梅(かいだれわせうめ)。他の土地に植えても根つかず、眼下に海を見渡せる切り立った山の頂近くに位置する皆平地区でしかうまく育ちません。

 昔から地元に根付いていた在来種である皆平早生梅を使用した梅干、「皆平しそ漬梅」は、作り方も昔ながらの漬け方を守っています。完熟して自ら落下した実だけを丁寧に集め、天日干しして塩漬けしたあとに熟成。薄い皮が破れないよう注意しながら、地元で採れる赤紫蘇をもんで濃く搾った液に20日ほどじっくり漬けて味と色を出します。

 皆平早生梅は、南高梅よりも小ぶりで収穫量が少ない貴重なものです。生産者の濱田洋さんによると、「干し梅としてはこれに勝るものはないと思います。皮が薄く滑らかなため、干し梅にすると美しい光沢がでます」とのこと。数少ない在来品種ならではのまじりっけのない風味、口に含むのにちょうどいい大きさで、ふっくらとした実と程よい酸味が特徴です。

 梅干に含まれているクエン酸には強い制菌作用があるといいます。食べ物が傷みやすいこれからの季節、食卓に、そしてお茶請けにも、さまざまな場面で大活躍しそうな「皆平しそ漬梅」。ぜひ、夏の贈り物にお勧めしたい一品です。

皆平梅の生産地

   
 

生産者の濱田洋さん

 

梅栽培農家の濱田光則さん

     
 

太陽光のもとで干します

 

じっくり漬け込んでいく