歌舞伎いろは

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文政の頃に完成したやわらかくて美味しい蒲焼き「うなぎ」はみんなが大好きなごちそう

 お話を「うなぎの蒲焼き」に戻しましょう。
 「蒲焼きの香りだけ嗅いでご飯を食べた男がうなぎ屋からその香り代を要求され、逆に銭の音で支払った」という江戸の笑話があるそうです。うなぎの蒲焼きがいかに「ごちそう」として江戸の庶民に認知されていたかがうかがえるエピソードですね。そもそもうなぎの蒲焼きは上方から江戸に伝わったもの。ご存知のように関西では腹から裂いてこしらえますが、武士の多い江戸では「腹切り」を嫌って背から裂くようになったそうです。また、文政(1818?1829年)の頃には余計な脂肪を落とし、身もやわらかくなる「蒸す」技術が加わります。さらにタレも、醤油に酒をあしらったものであったのが、醤油にみりんを加えて、照りや香り甘みが加わって味も格段に良くなり、江戸のうなぎの蒲焼きは完成したといわれています。

 今回ご紹介している「うなぎおこわ」は南九州産の上質なうなぎを使用。白焼き後に蒸して皮を丁寧に取り除いてあるので、脂っこくなくやわらかです。おこわは佐賀産のひよくもちを大釜で炊いた後、うなぎと同じ特製だれを染み込ませて蒸らしています。ほど良い甘さの自家製タレは餅米本来の味を引き出し、蒲焼きとおこわの相性をさらに高める決め手になっています。

 小口でお届けされるので食べやすく、何と言ってもみんなが大好きなごちそうのうなぎですから、ホームパーティや小腹が減ったときにも重宝しそう。お好みで粉山椒をふりかけると一層風味豊かに味わえます。

うなぎと相性がいい薬味の両雄は山椒とわさび

   

白焼き後に蒸して身をやわらかに

おこわにもうなぎと同じタレを混ぜます

   
 

小口に切ってあるので、急な来客や小腹が空いたときに重宝