歌舞伎いろは

【歌舞伎いろは】は歌舞伎の世界、「和」の世界を楽しむ「歌舞伎美人」の連載、読み物コンテンツのページです。「俳優、著名人の言葉」「歌舞伎衣裳、かつらの美」「劇場、小道具、大道具の世界」「問題に挑戦」など、さまざまな分野の読み物が掲載されています。



目ざしには片口いわし、丸干しにはうるめいわし。鮮魚として馴染みのある真いわしには別の呼び名も

 さて、鰯にまつわるさまざまな話をしてきましたが、ひとくちに「鰯」と言っても、姿がかなり違いますね。下あごが小さく、目ざしとしてお馴染みなのは片口(かたくち)いわしで、煮干しにもよく使われます。目が潤んで見えることからその名がついたうるめいわしは、頬ざし、丸干しにしてよく売られています。

 そして、鮮魚として店頭でよく見かける大ぶりな鰯が真(ま)いわしです。真いわしは、およそ18cm以上のものを大羽、10?18cmのものを中羽、10cm以下を小羽と呼ばれています。この真いわしの中でも、銚子港で旬の時期に水揚げされる脂ののった中羽いわしを厳選して使用し、丸大豆醤油と喜界島のさとうきびから作った粗糖のみで炊き上げたのが、今回ご紹介する「とろいわし」です。

 生産者の冨田正和さんは、親子二代にわたってこちらの商品を製造。「納得のいく鰯が水揚げされなければ製造しない」というほど、旬の脂ののったおいしい鰯にこだわっています。

 骨までやわらかくて、まるごと食べられる鰯は栄養たっぷり。また、ドコサヘキサエン酸(DHA)やエイコサペンタエン酸(EPA)がたっぷり含まれているという、青魚の脂はさらっとしているので後味がしつこくなく、「カラダにいいものを食べた」と、食後の満足感もひとしお。醤油と粗糖だけのシンプルな味付けだからこそ、素材である旬の鰯の旨さが存分に生きています。ともすると非常食やサイドメニューのイメージがある缶詰ですが、メインメニューとして食卓の中央に並べたくなる人気商品です。

銚子港での鰯の水揚げの様子

   

脂がのった旬のいわしの断面

生産者の冨田正和さん