歌舞伎いろは

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ところ変われば?意外に多彩な餅のバリエーション

 中国では「餅」の字は「ピン」と発音し「小麦をこねて油で焼いたもの」を指します。古くは粉食全般をさした時代もあり、その意味では麺類も「餅」から発展した食べ物といえるとか。中国料理の月餅も、「餅」を名乗っていますが、私たちがイメージする「餅」とはずいぶん趣が異なります。

 日本でも、実は改めて見てみると「これも餅なの」と思うようなものも。例えば、くず餅やわらび餅。原料は米ではなく、くず粉、蕨粉です。透き通るような見た目やプルンとした触感は、餅と言うよりデザート感覚!?さらに同じくず餅でも、川崎大師門前の名物としても知られる関東のそれは、こねた小麦粉を乳酸菌で熟成させて蒸した、なんと発酵食品です。

 とはいえこの季節、これ抜きにはお正月が迎えられない「餅」の代表選手は、やはり「つき餅」。焼くとぷくっとふくらみ、噛めばもっちりとよく伸びる白い餅は、新年のお雑煮に欠かせません。ところで、年の瀬にもちをつく風習は、すでに平安時代には行われていました。この頃から白い「つき餅」の他に、だいず、あずき、ごまなどの材料を加えた餅があったのだそう。

 他の食材をつき込み味や色の変化を楽しむ工夫は、現代にも受け継がれています。春の香をつき込んだよもぎ餅は、私たちになじみ深い味わい。山形県など山間部で伝わる栃の実をつき込んだ栃餅や、サツマイモの甘みが優しい長崎県のかんころ餅なども、素朴な郷土の味覚として親しまれています。


歌舞伎「食」のおはなし

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