歌舞伎いろは

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10日間も“だらだら”続く芝神明宮の「生姜祭」

 『め組の喧嘩』で知られる芝神明社で、もうひとつ有名なのが秋の例祭。11日間も続くため(参拝客がとぎれないから、この時期が長雨だからの説も)、その名も「だらだら祭」は、境内に市が立ち、主に生姜(しょうが)が売られたことから、別名「生姜祭」とも呼ばれています。この祭で配られる御前生姜を食べると風邪を引かないとか。元来生姜は薬用の植物でもあることから、厄除けと生姜の薬効とが結びついた縁起なのでしょう。

 現在では、生姜には抗菌作用や肝臓障害を予防するなど、すばらしい効果・効能があることが科学的にわかっています。辛味成分のジンゲオールが新陳代謝を活発にして発汗作用を促すことから、食事に取り入れればダイエット効果も! ジンゲオールを加熱するとショウガオールに変化しますが、この物質には、鎮痛、鎮咳、解熱の効果があるのだそう。子どもの頃、風邪をひくとおばあちゃんが「生姜湯」をつくってくれたのには、ちゃんと理由があったというわけです。

 寒い季節なら鍋物や湯豆腐の薬味に、夏場は生の新生姜に味噌を添えて…など、食べ方はいろいろ。生姜は「甘味」とも好相性で、砂糖漬けは江戸時代からありました。同じく江戸の頃から、ことに関西地方で親しまれていたのが、冷やし飴。水飴をお湯で溶いて生姜を絞った飲み物で、夏はきんきんに冷やして、冬は温かな「飴湯」でいただきます。生姜の風味がふわりと香る、素朴でどこか懐かしい、大人にも子どもにも愛される味わいです。


『東都名所尽芝神明宮祭礼生姜市之景(とうとめいしょづくし・しばしんめいさいれい・しょうがいちのけい)』溪斎英泉画 国立国会図書館蔵。無断転載禁。

歌舞伎「食」のおはなし

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