筋書いまむかし その壱 筋書いまむかし その壱

第3章.観劇の手引き ~邦楽連名~


 ここでは、公演をよりお楽しみいただくための筋書の便利な使い方をご紹介しましょう。
 「九月大歌舞伎」では、『寿曽我対面』『色彩間苅(いろもようちょっとかり)(まめ) かさね』『双蝶々曲輪日記 引窓』『口上/鷺娘』とバリエーション豊かな演目が並びます。「歌舞伎」は“歌”という字が使われるだけあって、音楽が大変重要な要素となっています。今回はその音楽を担う演奏者について、筋書での見方をご紹介します。

出語(でがた)り、出囃子(でばやし)は「あらすじ」をチェック!

 竹本、常磐津、清元などの浄瑠璃が観客に姿を見せて演奏することを「出語り」、長唄囃子連中の場合は「出囃子」と言います。筋書の「あらすじ」ページには、配役だけでなく、出語りや出囃子の演奏者の名前も掲載されています。義太夫狂言の場合、場面ごとに演奏者も変わることがあるので、筋書を見れば今観ている場面の演奏者を知ることができます。
 今月の場合、『かさね』は清元連中、『引窓』は竹本連中が出語りとなります。「三味線がかっこいい!」「あの人の唄が素敵だな~」と思ったら、ぜひ「あらすじ」でチェックしてみてください。

黒御簾(くろみす)音楽、裏方などは「邦楽連名」をチェック!

 歌舞伎の音楽は出語りや出囃子だけではありません。舞台下手の御簾の内で劇中の効果音やBGMの役割を担う音楽が演奏されます。これを一般的に「黒御簾音楽」と言います。この黒御簾音楽を担当する演奏者は、「邦楽連名」というスタッフ一覧ページ(通常の筋書の場合「今月の出演俳優」の次のページ)に掲載されています。

 「邦楽連名」には、音楽の演奏者だけでなく、舞台上手で足音などのバタバタッという音や、見得をする際の効果音となるツケを打つ「附打(つけうち)」、舞台監督のような役割を担い、舞台が始まる前や場面転換などで“チョン”と響く()を打つ「狂言作者」(関西では狂言作者とは別に狂言方という役職もある)、「振付」や、立廻りの動きをつける「立師(たてし)」など、欠かすことのできない主要スタッフの名前が記載されています。

邦楽連名(令和2〈2020〉年9月歌舞伎座)

 歌舞伎の舞台は、基本的に江戸時代の頃のようにマイクを通さない生音で上演され、さまざまな音にあふれています。舞台上で繰り広げられる唄や楽器の響きはもちろん、開幕前や舞台中のさまざまな音にも耳を澄ませてみてください。

※本公演では、新型コロナウイルス感染防止対策のため、筋書の販売を中止させていただきます。劇場では公演チラシ、配役やあらすじをまとめたリーフレットを無料配布いたします

 次回は「歌舞伎座第三期の筋書」「舞台写真の魅力」を中心にご紹介します。