筋書いまむかし その弐 筋書いまむかし その弐

第3章.観劇の手引き ~上演記録~


 ここでは、公演をよりお楽しみいただくための筋書の便利な使い方をご紹介しましょう。

『角力場』の上演記録(平成30〈2018〉年1月歌舞伎座筋書より一部抜粋) 
俳優の名前は上演当時のもので記載され、襲名で変わったときには左側に襲名後の名前を併記。

 今月の「十月大歌舞伎」で上演される『双蝶々曲輪日記 角力場』が、これまで歌舞伎座でどのくらい上演されているかご存知ですか?

 そうした疑問を解決してくれるのが、筋書の後半部に載っている「上演記録」です。「上演記録」では、戦後の昭和20年以降の主な劇場で行われた公演の記録が記載されています。記載内容は、上演年月劇場主要配役備考(襲名興行や追善興行などの情報)、上演時間です。松竹直営劇場(歌舞伎座、新橋演舞場、大阪松竹座、南座)をはじめ、御園座、博多座、明治座、浅草公会堂などの主要劇場での歌舞伎本公演の記録を載せています(巡業、特別公演、研修発表会などは含みません)。

 この「上演記録」の活用法ですが、例えば当月出演される俳優さんに注目して年表をたどってみると、その役を初めて演じたのはいつか、これまで何回出演したか、過去には別の役で出演していたなど、舞台を観るだけではわからないさまざまな情報を知ることができます。「このときは○○役と○○役をこの俳優たちが()っていたのか」「このときは親子で共演していた」「同じ役を親子代々で演じていたんだ」など、たくさんの発見があるでしょう。その発見は観劇の楽しみをさらに膨らませてくれます。

 また、俳優の聞書きページで、俳優が過去の上演時の思い出などを語っている場合もあるので、そうした際に「上演記録」を参照していただくと、よりイメージしやすいと思います。

 「上演記録」は“作品の歴史”が凝縮されたページですので、ぜひじっくり眺めてみてください。

 最後に、『角力場』の歌舞伎座での上演回数(昭和20年~)は、当月の公演を含めて16回でした!

※本公演では、新型コロナウイルス感染防止対策のため、筋書の販売を中止させていただきます。劇場では公演チラシ、配役やあらすじをまとめたリーフレットを無料配布いたします

 次回は、最終回「第四期・第五期歌舞伎座の筋書」「筋書を彩る表紙絵や挿絵」を中心に紹介します。