歌舞伎いろは
【歌舞伎いろは】は歌舞伎の世界、「和」の世界を楽しむ「歌舞伎美人」の連載、読み物コンテンツのページです。「俳優、著名人の言葉」「歌舞伎衣裳、かつらの美」「劇場、小道具、大道具の世界」「問題に挑戦」など、さまざまな分野の読み物が掲載されています。


其の三 ムダを出さない江戸っ子の暮らし

 さて、町人の中でも富裕層が豪奢を誇る一方で、庶民はもっぱら着物をリサイクルして大切に着ていました。縫い糸を抜いてはいくども洗い張りをし、仕立て直し、自分が着られなくなると、子供用に作り直し、子供が着古した後、売りに出したりもしました。

 着物はすべて手作りで、手間のかかる貴重品でした。そこで賑わったのが古着商。江戸時代には実に、固定店舗や行商など、組合だけでもその数1200軒あまりがあったそうです。

 昔の絵を見ると、竹で作った陳列台に古着や古布、端切れなどが並び、それらをじっくり吟味している女性の様子がうかがえます。ものを大切にし、無駄を出さない。江戸時代の町人の暮らしにはエコが根付いていたのです。

文/楠原安夕香、イラスト/吉屋瑛未、構成/上野耕作(K'sFactory)・西面冬樹(編集部)

くらしの今と昔

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