歌舞伎いろは
【歌舞伎いろは】は歌舞伎の世界、「和」の世界を楽しむ「歌舞伎美人」の連載、読み物コンテンツのページです。「俳優、著名人の言葉」「歌舞伎衣裳、かつらの美」「劇場、小道具、大道具の世界」「問題に挑戦」など、さまざまな分野の読み物が掲載されています。


其の一江戸から始まった花火大会

 「玉や〜ッ」の掛け声とともに打ち上げられ、夏の夜空に大輪の花を咲かせる花火は、現在でも夏の風物詩です。その花火大会が始まったのは、江戸時代。家の中で涼むのが我慢の限界に達すると、人々は、外へ、そして水辺へと暑さを忘れるためにこぞって出掛けました。

  水辺が涼しいのは、水温は気温より低いため、水の上を渡って吹いてくる風が涼やかだからです。ただ橋の上で涼むのもいいのですが、本格的に涼みたい人は、船に乗って川の上で過ごすこともしました。これが「涼み船(すずみぶね)」。涼み船が初めて出る日を川開きと言いました。

 『東都歳時記』には次のようにあります。「5月28日、両国橋の夕涼み、今日より始まり、8月28日に終る。竝に茶店、看せ物、夜店の始にして、今夜より花火をともす。逐夜貴賎群集す」。川遊びの期間中は、両国広小路に夜見世(よみせ)が許され、随時花火が上がりました。この花火、涼み船の客が座興に買っては上げていたというから驚きです。涼み船の客に花火を売る「花火船」のほかに、「うろうろ船」と呼ばれる、餅や酒、冷やし瓜などを売る小舟も数多く出て、川面はとてもにぎわっていたそうです。数秒の楽しみに、1両、2両と大金をはたいていたのだから、贅沢な納涼ですね。

夕涼み
 


くらしの今と昔

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