歌舞伎いろは

【歌舞伎いろは】は歌舞伎の世界、「和」の世界を楽しむ「歌舞伎美人」の連載、読み物コンテンツのページです。「俳優、著名人の言葉」「歌舞伎衣裳、かつらの美」「劇場、小道具、大道具の世界」「問題に挑戦」など、さまざまな分野の読み物が掲載されています。



楽しく無理なく、歌舞伎について学べたひととき
上:会場は丸の内一丁目、東京駅地下から直結のサピアタワーにある東京ステーションコンファレンス。参加者の中にはグループでお越しの方、男性の方の姿も見受けられました。
下:講師を務める金田栄一さん。

 「歌舞伎基礎セミナー」の会場は、東京駅八重洲北口に程近いサピアタワー内東京ステーションコンファレンス。抽選の結果選ばれた50名の方にご参加いただきました。

 講師にお迎えしたのは(株)伝統文化放送(「歌舞伎チャンネル」)社長の金田栄一さんです。金田さんは大学時代から歌舞伎に傾倒し卒業後松竹(株)に入社、歌舞伎座宣伝課長、歌舞伎座支配人、松竹(株)演劇本部ゼネラルマネージャーを歴任。歌舞伎を客席からだけでなく、舞台の裏側からも長い間見つめてきました。

 セミナーは、さまざまな写真を大型スクリーンに映しながら、歌舞伎の基礎知識をクイズ形式で問い、解説をする、という形で進められました。以下に一部をご紹介しましょう。

  最初の問題は「歌舞伎十八番」に関するもの(下記設問参照)。解説の途中で
 「答の選択肢(①外郎売 ②助六 ③矢の根 ④寿曽我対面)の中に共通点があるのですが、おわかりですか?」
と質問を投げかけると、すかさず前列の男性から「曾我兄弟!」という答が返ってきました。そう、どれも曾我十郎・五郎の兄弟が主人公です。そして、解説は「なぜ、歌舞伎には『曾我物』が多いのか」と展開します。

 「曾我兄弟の時代は義経とほぼ一緒で、歌舞伎の中では義経と曾我兄弟の両ヒーローがよく出てきます。江戸時代の人々にとっては圧倒的に人気のある歴史上の人物でした。当時は同じ時代のリアルなことを上演することができなかったので、江戸の人々にとってわかりやすい曾我兄弟と義経が芝居によく出てきたのでしょう」

 そして、大道具か小道具かを問う問題では見分けるコツについても披露。

 「引越しで持っていくのが小道具、持っていかないのが大道具という考え方だとかなりの確率で正解です。大きいものでも駕籠とか馬は小道具、鎧は身に着けるので衣裳に見えますがこれも小道具です。庭に植えてある大きな木は大道具、縁側にある盆栽は小道具。例えば、いまこの会場で撮影などがあったと仮定しましょう。壁や扉は大道具、そこにあるパーテーションは後から持ち込んだものでしょうから衝立と同じでこれは小道具。この投影スクリーンは微妙ですが部屋に設置されているので大道具でしょう」

 河竹黙阿弥にまつわる問いでは、黙阿弥作品の凝った外題や珍名に及び、「西南雲晴朝東風(おきげのくもはらうあさごち)」や「是珍聞猫根津美(これはちんぶんねことねずみ)」、文明開化を思わせる「舞台明治世夜劇(ぶたいあかるきじせいのよしばい)」などを紹介。わかりやすくユーモアを交えた巧みな話術に、参加者のみなさんは自然に引き込まれていきました。

「歌舞伎十八番」といえば市川團十郎家の「家の芸」。次のうち「歌舞伎十八番」に入っていない演目はどれ?

(1)外郎売 (2)助六 (3)矢の根 (4)寿曾我対面

答:(4)

歌舞伎と旅

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