「平成中村座ヨーロッパ公演」第1回
平成20年5月14日~6月1日の期間、ドイツ・ベルリンとルーマニア・シビウで行われた平成中村座ヨーロッパ公演。演目は串田和美演出の『夏祭浪花鑑』。公演を終えた感想を、出演者らが語りました。
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中村勘三郎―――
ドイツとルーマニアはそれぞれ違った興奮で、今回の公演を僕は一生わすれないですね。
ドイツでは最初、それほど入りが良くなかったんです。歌舞伎といっても当地の人には何が何やらよく分からないもが来ている訳ですからね。ところが、日に日に客席が膨れあがってきて、千穐楽の近くになると、場内は溢れんばかりのお客様。
客席では、男の人でも芝居見ながら"ギャー"っという悲鳴を上げるんですよ。女の子の悲鳴は聞いたことがあったけど、若い男の子たちの声が波のように舞台に押し寄せてきて、本当に凄かった。最後にドイツ語でご挨拶したら、さらにすごいことになっちゃってね(笑)。ぜひ、もう一度いきたいですね。
串田和美―――
ルーマニアのシビウの会場は、工場の跡地でしたから、隙間だらけで(笑)。舞台が午後10時頃にやっと暗くなるんです。
フェスティバルだから色々な場所でも芝居をやっているんだけど、みんな遅い時間から始まるんです。なぜかなと思っていたんですが、今回の公演の最終日が午後5時からの開幕で、その時間だとまだ舞台が明るい・・・なるほど10時開演じゃないと、と改めて思いました。そういう事も面白かったですね。
勘三郎―――
ルーマニアは世界的な演劇祭でしたから、色々な国の演劇が集まってきていて、特にルーマニアの『ファウスト』をしているチームが素晴らしかったですね。主演女優の方なんて特に素晴らしかった。
それで、『歌舞伎』と『ファウスト』が人気を二分しているから、両方金メダルだなんて言われていたんですけど、そうしたら、『ファウスト』側の演出家が、「僕らはホームで、君たちはアウェイ、だから君たちのほうがちょっと上なんじゃないかな」なんて上手いこと言ってくれて、嬉しくなっちゃいましたね。
ベルリン公演会場:世界文化の家