歌舞伎いろは

【歌舞伎いろは】は歌舞伎の世界、「和」の世界を楽しむ「歌舞伎美人」の連載、読み物コンテンツのページです。「俳優、著名人の言葉」「歌舞伎衣裳、かつらの美」「劇場、小道具、大道具の世界」「問題に挑戦」など、さまざまな分野の読み物が掲載されています。



大切な1冊:図解満載の『歌舞伎 衣裳と扮装』



『歌舞伎 衣裳と扮装』
相馬晧 著・鳥居清言 画/大日本雄弁会講談社/1957年/定価4,200円

「この本は20年前くらいに古本屋で買い求めたものです。2万円くらいだったのをちょっと値切ってね(笑)。古い本なのにカラー写真もあるし、図版の絵がとってもいいでしょ。帯の結び方から裾の端折り(はしょり)方、頭に付けるかぶり物も、図入りで丁寧に紹介されています。かぶり物もすごく種類があって、それを見たら魚屋なのか、大工なのか、職業がすぐにわかるんですよ」



『歌舞伎のびっくり満喫図鑑』
君野倫子 著/市川染五郎 監修/小学館/2010年
/定価1,680円
市川さんが担当する俳優さんのひとりでもある染五郎さんが監修された本。かつらや衣裳、小道具、大道具について写真をふんだんに使って楽しく解説してあります。立役のかつらも写真入りで20種類ほど紹介されていますし、かぶり物のページもあります。これを読むだけでも、かなりのかつら通になれますよ!

市川歳三さんのヨコガオ
 77歳の大ベテランでいらっしゃる市川さんに対して失礼かもしれませんが、市川さんはチャーミングという言葉がぴったりのお人柄でした。それに着るものや持ち物も、大変おしゃれ。ふわりとした柔らかみがあって、いろんな方から慕われる理由がつかめた気がしました。
 角がとれた上品な江戸言葉を使われ、「光っている」は「しかっている」、「ヒーター」は「しーたー」と発音される響きがなんとも心地よかったです。骨董がお好きだそうで、焼き物のコレクションには自信をお持ちのようでした。
 次男の純也さんが床山に入門されたのは、高麗屋三代襲名の翌年で市川さんが50歳、純也さん19歳のとき。入門する純也さんに譲るために自分の道具箱をぴかぴかに磨いておられたそうで、ある床山さんが「心にじんとくるいい風景だった」と言われていました。
 伝統の継承とひとくちに言っても、床山として一人前になるには本人が大変な精進を積まなくてはなりませんし、また育てるほうにも忍耐と大きな度量が必要です。日本の大切な文化である床山の技術。ひとりでも多くの床山さんが育ってほしいと感じました。
(取材日2010年5月22日)


俊寛のかつらの仕事をする市川さん。かつらをのせている台は、結坊主(ゆいぼうず)。


東京鴨治床山の人形町のお仕事場。右は、地方から上京し修業にはげむ十代の床山さん。


ちょっと昔の歌舞伎 モノからひもとく想い出あれこれ

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