【歌舞伎いろは】は歌舞伎の世界、「和」の世界を楽しむ「歌舞伎美人」の連載、読み物コンテンツのページです。「俳優、著名人の言葉」「歌舞伎衣裳、かつらの美」「劇場、小道具、大道具の世界」「問題に挑戦」など、さまざまな分野の読み物が掲載されています。
匠―劇場、大道具、小道具の世界
元興寺(国宝。奈良市) |
浅草寺の新しいチタン瓦(奥)と年月を経た銅板瓦(手前) |
浅草寺の新素材瓦の100年後は?
その後、法隆寺などの仏教建築物に瓦は欠かせないものとして使用され続けてきました。しかしながら、土を焼いて作られた瓦は長い年月の風雪を経ることにより劣化するものがあり、多くの寺院では50年~100年ぐらいの周期で葺き替えを行い、劣化した瓦を新しい瓦に置き換えながら使用しています。浅草寺における今回の葺き替えは、土を焼いて作られた瓦ではなく、耐震性向上を目的とした軽量化のためへのチタン瓦への転換であり、1000年以上ある歴史を変える画期的な取り組みだと思っています。
そんな画期的な取り組みを実際に見て、遠目から見る限りやきものの瓦となんら見え方が変わらないと感じました。発表によるとやきものの瓦独特の色合いを再現するために3色の色合を作ったそうです。新素材開発技術のこだわりと凄さを感じるとともに、この新素材は今後どんな変化をしていくのだろうか、とも感じました。土を焼いたやきものは年月を経ることによる変化が生じます。この変化は色変化であったり、損傷であったりしますが、この年月の重みに耐えてきた風格が多くの人々に「味わい」や「渋み」として感じとられていることも事実です。やきもの瓦と共に古くから寺社仏閣の屋根に使用されてきた銅版瓦もまたその年月を経ることにより銅赤色から緑青色への変化が美しいものです。今後、この新しい素材がどのような変化をしていくのかがとても楽しみでしかたありません。INAXの新素材開発においても経年変化によるエイジングの効果は、とても重要な開発要素です。100年後の浅草寺を見てみたいものです。
INAXライブミュージアム ミュージアム活動推進室 室長
後藤泰男
平成 劇場獨案内
バックナンバー
-
大阪松竹座
7月に大歌舞伎が上演される道頓堀の大阪松竹座。大正12年竣工の初代の建物は近代建築史上に残る名建築と言われ、道頓堀のシンボルとして親しまれていました。
-
博多座
6月に大歌舞伎が上演される博多座を取材。福岡空港、JR博多駅から地下鉄で直通の中洲川端駅に直結。遠方からのアクセスも快適、大変恵まれた立地です。
-
Bunkamuraシアターコクーン
今回は、6月の『渋谷・コクーン 歌舞伎第十二弾 盟三五大切(かみかけてさんごたいせつ)』の後、7月から半年、改修のための長期の休業に入るBunkamuraのシアターコクーンを取材しました。
-
旧金毘羅大芝居(金丸座)
国の重要文化財に指定された、現存する最古の芝居小屋旧金毘羅大芝居(金丸座)。歌舞伎界の春の風物詩「四国こんぴら歌舞伎大芝居」は4月9日(土)に初日を迎えます。
-
京都四條南座
歌舞伎発祥の地といわれる京の、四条河原付近に芝居街が誕生したのは元和年間(1615~1623年)。その元和以来の大変由緒ある劇場、南座の魅力をご紹介します。
-
初春を祝い賑わう 浅草公会堂
「新春浅草歌舞伎」が上演される浅草公会堂を取材しました。「新春浅草歌舞伎」はお正月の浅草の風物詩。浅草の人々の心意気に支えられ、育まれ、年を重ねてきました。
-
日生劇場
今回は「十二月大歌舞伎」が上演される日生劇場。立地は皇居にほど近く、日比谷通りに面した一等地。著名な建築家である村野藤吾設計の建物は学術的にも貴重なものです。観劇の際にはぜひ劇場にもご注目ください。
-
大阪平成中村座
新連載の第1回は2010年10月、11月に大阪城西の丸庭園内に出現した仮設劇場、大阪平成中村座を取材。舞台後方を上演中に開けて大阪城や庭園の緑を借景とする演出が大きな話題を呼んでいます。