歌舞伎いろは

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「音を織りなす」外壁デザイン

Bunkamuraの外観(正面)

モザイクタイルによる斜模様貼り

下部には天然石をあしらい、その下に質感の異なるタイルを配置

 Bunkamuraは、人と文化と環境を考え、素材や光を重要視するフランスの建築家ジャン・ミッシェル・ヴィルモット(1947~ )のチームが内装を手がけ、石本建築事務所の全体設計の下、東急設計コンサルタント、MIDI総合設計研究所との共同設計で1989年に竣工しました。当時の「Tile&Architecture 10(INAX出版発行)」に、石本建築設計事務所の阿佐見明彦らは外装のデザインについて以下のように書いています。

 「全体のデザイン基調は「音楽の香り」とモダーンで洗練された雰囲気の創出にあり、モノトーンのグレーをベースに、金属、石、ガラスといったマテリアルをこれに組み合わせる構成とした。外壁のテーマは「音を織りなす」表現を意図し、シルキーな織物にイメージをもとめ.モザイクタイルによる斜模様貼りとした。さらに、45mm角モザイクタイルを、「光の糸」と「色の糸」とし、それぞれをタテ糸、ヨコ糸に見立て、光の表現をラスター※1、ブライト※2、マット※3の各釉薬の3段階で表し、色の表現はグレーをベースにパープルブルーとピンクの3色とした。」

 ヴィルモットと阿佐見らが共通で表現していることが、素材と光を重要視していることであり、特に外壁に用いたモザイクタイルには「音を織りなす」ことを意図して制作し、施工したとあります。「音を織りなす」とはとても素敵な表現ですが、具体的にタイルに求められた機能は、多彩な光沢の表現力だったように感じています。何度か訪れたことのあるBunkamuraでしたが、竣工から20年以上経った今改めて当時の設計者たちの想いを考えながら建物を見直してみると、そういうことだったのかと新たな発見をすることができ、改めてタイルの可能性について考え直すことができました。

※1 ラスター:「光り輝く」を語源とした、金属光沢を持つこと
※2 ブライト: 光沢のある(ツヤあり)
※3 マット : 光沢のない(ツヤなし)


INAX ミュージアム推進グループ リーダー
後藤泰男

平成 劇場獨案内

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