昭和25(1950)年12月竣工の第四期の歌舞伎座は、建物の老朽化により、平成22(2010)年5月より建替え工事が行われ、平成25(2013)年2月に第五期歌舞伎座が誕生しました。
古くから使用されていた意匠や劇場外観を再現した、歴史とデザイン性を合わせもつ劇場としての新開場から、今年で10周年となります。この特集では、第五期の歌舞伎座のみどころを中心に、進化を続ける歌舞伎座をご紹介します。
鳳凰丸
「鳳凰丸」は明治22(1889)年に誕生した歌舞伎座の創設者の一人、福地桜痴(源一郎)が座紋に採用した図案で、原形となったのは法隆寺の宝物「鳳凰円文螺鈿唐櫃(ほうおうえんもんらでんからびつ)」に使われた紋様です。鳳凰は古来中国では、麟・亀・竜とともに四瑞として尊ばれた想像上の鳥で、とてもめでたいとされ、第五期歌舞伎座内でも引き続き「鳳凰丸」が描かれています。
写真:©松竹
\建築現場より/
画像にマウスを合わせると完成後の様子を見ることができます!(スマートフォンの場合はクリック)
写真:©松竹
歌舞伎座の“朱”
第四期の面影を残しながら、場内場外には赤を基調としたものが多く存在しています。歌舞伎を観に行く楽しみはもちろん、華やかな空間でひとときを過ごすことができるのも、歌舞伎座の魅力の一つです。
京都・平等院鳳凰堂中堂母屋の方立の菱形文様をモチーフにしたもの。22種類以上の色糸を組み合わせ、職人による手刺しで作られた
中堂母屋の「咋鳥文様(さくちょうもんよう)」をモチーフに、花をくわえた幸せを呼ぶ咋鳥4羽が描かれている
座紋が一つひとつ絵づけされている
特注の朱が施されている。第五期の歌舞伎座で設置された新しい設備の一つ
手すりだけではなく、ステップにも朱色が使われており、劇場内での統一感にもこだわっている
興行の大入り、お客様や舞台関係者の平穏無事、そして近隣の平安、火伏の守護などを祈願して祀られている。どなたでも参拝可能
朱色の階段から間近に見える歌舞伎座の大屋根が、『楼門五三桐』石川五右衛門のせりふ「絶景かな、絶景かな」を思い起こさせる
夜は昼とはまた違った雰囲気に
写真:©松竹
\歌舞伎座再発見/
歌舞伎座タワー5階 お土産処楽座では、「歌舞伎稲荷神社」の御朱印をいただけます(初穂料300円~)。赤い鳳凰丸が特徴の御朱印を、ご参拝の記念にどうぞお納めください。
変化する歌舞伎座
第五期歌舞伎座では歌舞伎座タワーの4階・5階に、「屋上庭園」や「四階回廊~想い出の歌舞伎座~」がオープン。歌舞伎座タワーの地下2階には、東京メトロ東銀座駅3番出口に直結する「木挽町広場」が誕生しました。また、移ろいゆく季節感を表現するライトアップも新たにデザインされました。季節によって変化する劇場の表情をみせるほか、行事に応じたライトアップも行われています。
河竹黙阿弥が晩年を過ごした家の庭に置かれていた石燈籠と蹲踞
歌舞伎の発展に尽力した先人たちを顕彰する石碑
第四期までの歌舞伎座の建物模型、「想い出の歌舞伎俳優」の展示
歌舞伎座の切符売場、カフェや売店が並ぶ広場では、手描きの大提灯がシンボルとして親しまれている
カラフルな色彩のなかに、座紋の鳳凰丸や松葉などが浮かび上がった(2014年4月)
医療従事者への感謝の気持ちを込めたライトアップ(2020年5月)
純白色(5,000K)のライティング。季節と三分割された時間帯によって照明パターンが異なる
暖白色(3,000K)のライティング。宵パターン(17時~22時頃)はフル点灯となる
写真:©松竹
錺金物
第四期歌舞伎座では、建物や舞台に形や種類の異なる多くの金属製の装飾品が施されていました。これらは第五期でも元のデザインを踏襲して新調されており、釘の頭を隠す錺金物“釘隠し”だけでも、6枚の葉を模様化した「六葉(ろくよう)」など、さまざまな形や大きさのものがあります。
業平格子
第四期歌舞伎座で施された業平格子(菱形の文様)は、材質を変えながらその意匠を第五期でも受け継いでいます。劇場でどのような文様が用いられているか、探してみてはいかがでしょうか。
画像をクリックすると、どこに施されているかを見ることができます!
写真:©松竹
新開場十周年記念グッズ・イベント
新開場10周年を記念した特別な催しやグッズをご用意しております。ぜひご観劇の思い出にお求めください。
『身替座禅』(左)、『廓文章』(右)
各商品やイベントの詳細はこちらをご確認ください。
\現在公演中/
歌舞伎座新開場十周年記念
昼の部 午前11時~
夜の部 午後4時~
劇場:歌舞伎座
歌舞伎座にお立ち寄りの際には、第五期歌舞伎座ならではのみどころにもご注目いただき、ご観劇、観光をさらにお楽しみください。10周年を迎え、これからも歌舞伎の殿堂として伝統をつないでいく歌舞伎座に、ぜひご期待ください。