歌舞伎の化粧・衣裳

目にも鮮やかな衣裳や化粧は、役柄の身分や性質を表す意味も備えています。これを知ってから舞台を観ると、楽しさも倍増です。

歌舞伎の象徴「隈取(くまどり)」

顔にカラフルな線を描く「隈取」は、歌舞伎の象徴です。血管や筋肉のデフォルメである隈取のポイントは色。たとえば赤い隈は、若さや正義、力、激しい怒りなどを発散する力を表し、青い隈は、高貴な身分でありながら、国の乗っ取りなどを企む悪や怨霊などを表現。茶色の隈は、人間に化けた妖怪変化などを表すというように、色で役の性格がわかります。ほかにも、鯰のような形のひげや朝顔の葉などを描いた、ユーモアたっぷりの戯隈(ざれぐま)などがあります。

①筋隈

①筋隈

②むきみ隈

②むきみ隈

③時平の隈

③時平の隈

④茨木の隈

④茨木の隈

⑤鯰隈

⑤鯰隈

女方(おんながた)の衣裳

江戸時代、歌舞伎に女性が出ることが禁じられてからは、女性の役もすべて男性が演じます。演じる人が「女方」。男性役は「立役(たちやく)」と呼ばれています。体つきが大きく、声も低い男性がどう演じれば女性らしく見えるのか? 仕草やせりふの言い回しなどの演技、衣裳や鬘(かつら)、化粧などを何百年にもわたり研究し、受け継いできたのが「女方」の芸です。

  • 御殿に勤める偉い人の衣裳。格が感じられます。

    御殿に勤める偉い人の衣裳。格が感じられます。

  • 家紋の位置に白い丸。浪人の女房など、低い身分であることを表します。

    家紋の位置に白い丸。浪人の女房など、低い身分であることを表します。