舞台では、俳優のせりふに限らず、たくさんの音が使われています。
たとえば、風雨などの自然の音や人の足音などを表す効果音、情感豊かなBGM、三味線を使った唄や語り。どれも歌舞伎には欠かせません。
“チョン!”という音は「柝」、“ばたばた”“ばーったり”は「ツケ」
芝居の幕開きや幕切れ、舞台転換ほか、舞台進行の合図として“チョン!”あるいは“チョン、チョン、チョン…”などと客席に響きわたる拍子木の音が「柝(き)」です。
また、見得をするとき(決め姿の瞬間)、重要人物が登場する足音、物が落ちたときなどのアクセントとなる音が「ツケ」。上手(かみて)の端でこの音を出す人を「ツケ打ち」といい、俳優と呼吸を合わせてタイミングよく打ちます。
歌舞伎音楽は“見た目”にも注目
チラシや筋書(番付)で、演目の下に書かれている「竹本(たけもと)連中」「長唄囃子(ながうたはやし)連中」「常磐津(ときわず)連中」「清元(きよもと)連中」とは、居や踊りで使われる歌舞伎音楽を演奏する人のことです。竹本とは義太夫節のことです。義太夫節は、三味線に合わせて場面の状況や登場人物の心境などを語るナレーションのようなものです。長唄はメロディーに乗せて唄われるもので、義太夫節や常磐津節、清元節は「浄瑠璃」「語り物」とも呼ばれ、それぞれ特徴があります。
観客に顔を出してする演奏を、長唄囃子連中では「出囃子」、ほかは「出語り」といいます。持ち味や使う三味線の種類のほか、演奏姿もそれぞれです。
表で裏で大活躍の長唄囃子連中
「黒御簾(くろみす)」の中で演奏されるお芝居のBGMや効果音を「黒御簾音楽」といい、長唄とお囃子の人々が担当しています。“どーん、どーん…”という雪の音や“パラパラ”という雨の音、幽霊の“ひゅ~ドロドロ”、芝居を盛り上げる唄などがよく知られています。
ちなみに「囃子」は小鼓(こつづみ。単に「つづみ」とも)、大鼓(おおつづみ)、太鼓(たいこ)、笛(ふえ)、鉦(かね)などで演奏され、「鳴物(なりもの)」ともいいます。