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亀治郎が語る襲名披露興行「猿之助の名に厚みを」
新橋演舞場「六月大歌舞伎」「七月大歌舞伎」で四代目市川猿之助を襲名する亀治郎が、襲名と襲名演目について語りました。
襲名は進化するための通過儀礼
"亀治郎"という名前への惜別が大半で、"猿之助"襲名の喜びが1割、まだまだ襲名の実感がわかない現在の心境を「開けたいけれど、開けたくない箱」と表現した亀治郎。それでも、襲名は「歌舞伎にとって大事なこと。進化するための通過儀礼」と言います。
「精神は猿之助を目指しますけど、芸は超えられるものではなく、厚みを増していくもの。初代の生き様を吸いとって猿之助の名前が大きくなったと思うので、僕という肉体を通して、名が大きくなる、その助けになれれば」というのが、亀治郎の思いのようです。
「人がやらないだろうな、と思うとやる、それが猿之助。自分のやりたいようやるのが澤瀉屋」と、これからも名前の大きさにとらわれず、軽やかに自由に動く姿勢を見せますが、その根底には「歌舞伎に対する信頼感、伝統への安心感を、僕らが失ってはいけない」という、強い信念があるようです。当面は「古典、新作、三代猿之助四十八撰、偏ることなくやっていきたい」との決意を語りました。
この世ならざるものが似合う――『ヤマトタケル』
「重圧は一切なくて、いよいよできる!という喜びのほうが大きい」。初役のプレッシャーよりも、「自分が子どもの頃に見た"あの"『ヤマトタケル』をやって、初演と同じ感動を自分が(演者として)味わいたい」とのこと。今回は、スーパー歌舞伎とはいえ、あくまでも「古典として取り組み」、時間を短縮する方向で上演したいそうです。
また、宣伝写真の撮影で白鳥の衣裳の感想を聞かれ、「まったく初役の気がしない」とひと言。「『千本桜』の狐、『ヤマトタケル』の鳥、『黒塚』の鬼...。人間じゃないところが澤瀉屋、なんでしょうか。"この世ならざるもの"が似合うんですかね」と、3つの襲名披露狂言の役々を亀治郎流にまとめてくれました。
狐が大好き!――『義経千本桜』「四の切」
子どもの頃からの憧れだったという「四の切」は、平成22年8月「亀治郎の会」、翌23年5月明治座に次いで、3度目の上演となります。あまりに好きすぎて「本当に千本桜の中の狐になっている感じになってしまう」ため、試行錯誤しながら「自分の理想との格闘になるだろう」とのこと。ケレンたっぷりの演出はそのままですが、3度目とあって体力的な面では自信をのぞかせました。
一番好きな月といえば――『黒塚』
猿之助が太陽なら、亀治郎は月――。人にそう言われ、なるほどと思ったという亀治郎が、舞台で最も好きなのが『黒塚』の月。老女岩手から鬼女へ変わるところは、「無心になれと言われるが難しい。今回は何も考えず、"即興"ではないけれど、そういう気持ちでやろうと思っています」。その相手役の阿闍梨も初役の團十郎で、「出ていただけるのが本当にありがたい」と、共演を楽しみにしている様子がうかがえました。
※澤瀉屋の「瀉」のつくりは、正しくは"わかんむり"です。