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映画『残菊物語』がカンヌ映画祭出品、春猿が舞台出演への思いを新たに

映画『残菊物語』がカンヌ映画祭出品、春猿が舞台出演への思いを新たに

 6月4日(木)から三越劇場で始まる「新派名作劇場」にて、『残菊物語』に出演する水谷八重子、市川春猿が、溝口健二監督の映画『残菊物語』のデジタル修復版完成記念試写に出席、あらためて作品への思いを語りました。

 5月18日(月)から始まる第68回カンヌ国際映画祭のクラシック部門、「カンヌ・クラシック」での上映が決定した映画『残菊物語』。4K画像にデジタル修復された溝口作品は、繊細な陰影まで鮮やかに蘇り、歴史的作品がまた新たな感動をもたらすことになりました。

 『残菊物語』はたびたび映像化されていますが、溝口作品は昭和14(1939)年に公開、国内外で高い評価を得ています。この映画では、歌舞伎座の楽屋から舞台へ向かうファーストシーンから、溝口の代名詞ともなっているワンシーン・ワンカットの手法が徹底され、『四谷怪談』『関の扉』『石橋』の舞台は臨場感あふれるカット割りで映し出されます。

映画『残菊物語』がカンヌ映画祭出品、春猿が舞台出演への思いを新たに

溝口の残した日本に感嘆
 二代目尾上菊之助役を演じているのは、舞台の初演(昭和12年10月明治座)で人気を獲得していた花柳章太郎。この菊之助役に6月の「新派名作劇場」で初挑戦するのが春猿です。菊之助に恋心を抱かれ、ゆえに引き離されつつも菊之助を支え続けたお徳は、水谷八重子が勤めます。

 カンヌへの出品を聞いて水谷は「日本の素晴らしさを世界の人々に再認識してもらえる好機」と喜び、春猿も「当時の日本映画の技術や俳優の演技力を世界中で見てもらえる、こんな素晴らしいことはない」と、その意義を讃えました。

 「日本人の生活習慣が実にきめ細かにとらえられ、東京と大阪の違いまで残っている。なんだかうれしくなってしまいました」。試写の感想を聞かれた水谷に続けて春猿も、「デジタル技術のない中であれだけの作品を残すなんて。そして、長回しの大変さと贅沢さ。役者の数もセットも、花柳先生の衣裳のこだわりも」と、細部へのこだわりに感心しきりの様子でした。水谷は、ワンシーン・ワンカットの映像に「スピルバーグ監督のテレビドラマ『ER 緊急救命室』で受けたショックを、古い日本映画からあらためて受けた感じがします」と語りました。

映画『残菊物語』がカンヌ映画祭出品、春猿が舞台出演への思いを新たに

新たな舞台『残菊物語』の誕生へ
 舞台は、水谷は3度目の出演で、相手の菊之助役は錦之助、橋之助に続き、今回初役となる春猿。「私は立役の機会がなかなかなく、『残菊物語』の福助役で出演したときも(2002年9月帝国劇場)、昨年正月三越劇場で『明治一代女』の沢村仙枝役をさせていただいたときも、立役は難しいなと。新派の立役は魅力的な男性が多く、女性に支えられて生きていく男という印象があり、今回はそのあたりをしっかり勉強させていただこうと思っております」と、春猿は役に前向きに取り組む姿勢を見せました。

 「新派は、日本人のよさ、女性の奥ゆかしさや力強さ、心の豊かさを伝えてくれる素晴らしい演劇」と、春猿があらためて新派の作品を大切に感じていると語ると、水谷は「そう言ってくださると心強い。昔の生活をお客様の前で生きてみせるのが新派。ですから、日本人の生き様を見ていただくため、その芝居を伝えていくことが新派の大きな役目ではないかと思っています」と熱い思いを語りました。

 「新作の『残菊物語』をいただいたと思って、私たちにしかできないものをつくり上げたい」と意欲的に語った水谷。春猿も「歌舞伎の世界を描いていますが、お徳と菊之助の愛情、心の底も強く押し出していける舞台にしたい」と意気込み、映画ともこれまでの舞台とも違った、また新たな『残菊物語』の6月の誕生を予感させました。

 三越劇場「新派名作劇場」は、6月4日(木)から26日(金)までの公演。チケットは、チケットWeb松竹チケットホン松竹三越劇場ほかにて販売中です。

2015/05/07