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鴈治郎、梅玉、中車が語る「博多座六月大歌舞伎」
6月2日(火)に初日を迎える、博多座 「六月博多座大歌舞伎」にて中村翫雀改め四代目中村鴈治郎襲名披露を行う中村鴈治郎と、出演の中村梅玉、市川中車が、博多で行われた記者懇親会に出席しました。
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縁のある博多座、縁の深い共演者
「祖父、二代目鴈治郎が亡くなったとき(昭和58年4月)、実は博多の舞踊公演中でして、中村屋のおじさん(十七世勘三郎)が、こうしたら帰れるからと、狂言を差し替えてくださって、飛行機で帰った覚えがあります」と、襲名披露する鴈治郎の名前と博多との縁を話した四代目鴈治郎。「正月にスタートした襲名披露興行、すべて一緒に出させていただいている」と言う梅玉は6年連続の博多座出演、こちらも両方に深い縁を感じている様子でした。
さらに博多座出演は、自身の襲名以来二度目となる中車も、「父(猿翁)から、團子だったとき、二代目鴈治郎のおじ様の『河庄』に憧れて歌舞伎を続けようと強く思ったのだと聞いています」と、鴈治郎家との縁を語りました。鴈治郎も「二代目は澤瀉屋さんの芝居にずっと出ていたので、僕は澤瀉屋の兄さん(猿翁)の芝居をずいぶん見させていただきました。いろんな意味でご縁があります」と続け、襲名、博多でつながる三人がそれぞれの思いを語りました。
いつものやり方でお見せする『連獅子』
公演は、『播州皿屋敷』で幕を開けます。「有名な皿屋敷伝説の芝居ですが、『番町皿屋敷』の青山播磨と違い、鉄山はまったくの敵役でサディスティック。敵役は、お客様がなんて悪い奴だ、と思って観てくださるのが楽しいですね」と、梅玉は初役を楽しみにしていることを語りました。「古典ですけれど、難しくはありません。お菊をなぶり殺しにするところを、楽しんで観ていただければ」と、上演の少ない演目をわかりやすくアピールしました。
『連獅子』は、鴈治郎が息子の壱太郎と踊ります。「今回は、“宗論”ではなく、私のいつもどおりの“蟹山伏”でさせていただきます。暑い中で毛を振って、いい汗をかきます」。『曽根崎心中』は「襲名披露狂言ではありませんよ、皆様のアンコールに私は付き合っている立場です」と、大きく笑い飛ばした鴈治郎ですが、「でもやはり、父が元気でやってくれることはうれしい。中車さんとがっぷり組むのは初めてで、梅玉兄さんにも出ていただきますし」と、喜びを隠せませんでした。
「口上」には三人それぞれの思いが
夜の部には「口上」があります。「今回は、藤十郎兄さんに代わって鴈治郎さんを紹介する役なので、まじめなことしか言えない」と梅玉が残念がると、「やっと自分の口上が終わったと思ったのに…。すごく緊張するので、僕の中ではある意味、最大の演目かもしれません」と中車。鴈治郎は「役者が自分の言葉でしゃべるのは襲名しかありません。ですから私は固いことしか言いませんが、あとの方は何を言っていただいても」と、緊張を解きほぐすように笑顔を見せました。
「口上」の前には、中車が3度目の『ぢいさんばあさん』に出演。「伊織を甘く気障にやるのが澤瀉屋の型だと父から聞いたのですが、私自身にどちらもあまりないので…。伊織とるんの再会ではいつも、父と母が45年ぶりに再会したあの時を思い出すのですが、だからこそ私だけができる何かがあると思ってやっております」。
初代鴈治郎の半生を描く『芸道一代男』
『芸道一代男』は、鴈治郎の名付け親でもある川口松太郎の原作を、今回の襲名披露に合わせて歌舞伎作品として手直ししたもので、「自分の親が役者だとは知らずに役者になったという、初代鴈治郎の半生記です」。鴈治郎家の当り芸も折り込まれ、劇中劇の『河庄』では「初代さんがこうだったであろうと」、格子の着物に白いさらしの頬かむりと、4月の歌舞伎座とはまた違った扮装で登場します。
「初代が、どれだけ鴈治郎という名前を意識していたか。もしかしたら、後を継がせなくてもいい、一世一代でいい…、本当にそういう役者だったんじゃないかなと思います」。この作品の上演が決まり、鴈治郎の名前の大きさ、唯一無二の存在に思いを新たにする四代目でしたが、同時に「なかなか面白い芝居になるのでは」と、自らも上演に期待を寄せていました。
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「中村翫雀改め四代目中村鴈治郎襲名披露 六月博多座大歌舞伎」は、6月2日(火)から26日(金)までの公演。チケットは 博多座ほかにて、販売中です。