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仁左衛門が語る、大阪松竹座「七月大歌舞伎」
7月3日(日)に初日を迎える、大阪松竹座「関西・歌舞伎を愛する会 第二十五回 七月大歌舞伎」に出演の片岡仁左衛門が、公演への思いを語りました。
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五代目中村雀右衛門襲名披露の公演で、襲名披露口上のほか2演目に出演する仁左衛門。「おじ様(四世雀右衛門)に受けたご恩を、新しい雀右衛門さんに少しでもお返しできたら」との気持ちで、昼夜の2役を勤めます。
いじらしいお染の思い出が残る『鳥辺山心中』
「前回、私が勤めましたのが大阪松竹座で(平成14年7月)、おじ様のお染。それ以来の半九郎です。おじ様は80歳を超えていらしたけれど、とにかくかわいいお染さんで、本当にいじらしい。思い出もありますので、ぜひ、新雀右衛門さんの襲名ご披露でやりたいなと」。半九郎は本来、「無骨な、もっさりとした男で、そういう男が恋に落ちるのがいいところでしたが、(三世)寿海のおじさんがなさって以来、二枚目のようになってきました。今回は、私なりの無骨さが出せれば」と、久々の半九郎に力が入ります。
十三世仁左衛門が半九郎、自分が源三郎を勤めた折に、「寿海のおじさんのお宅にうかがい、父が半九郎を教えていただいているときに横で聞いていました。おじさんは芝居のタイミングなど非常に細かい。後半、激高してくるとせりふが速くなりますが、速くなったらいけません、声の高低、強弱で表すようにとおっしゃいました」。怒りでまくし立てているように聞こえるのは芸の力、「早口でしゃべったのではお客様にわからない」と言います。
耳に心地よい“綺堂節”ともいわれるせりふ回しも、「お客様が気持ちよくなるようにやらないといけません。そのためには自分が気持ちよくならないとだめですけど、自分だけが気持ちよくやってしまってもだめ」。矛盾した話ですがと断りながら、「年を重ねて意識せず、自然と出てくるようになった」結果、お客様に気持ちよく響くのではと語りました。
与三郎が変わった理由がよくわかる「赤間別荘」
『与話情浮名横櫛』の与三郎も、四世雀右衛門のお富で2度共演、こちらもやはり「京屋のおじさんは素敵でした」と、舞台姿を思い浮かべながら話しました。「私と二回りも年が違いますけれど、こういうお役では本当に、いつもみずみずしい」、共演できたことが幸せと笑顔を見せました。
「すっきりとしていながら、どこか柔らか味、上方でいうぼんぼん、という雰囲気を出すことを心がけています」という与三郎。「木更津海岸見染の場」と「源氏店の場」では「煙管の持ち方一つでも変わりますし、莨(たばこ)も、見染では2口くらい吸ってすぐに捨てますが、(落ちぶれて登場する)源氏店では、莨も貴重品ですからぎりぎりまで吸うとか…」、さまざまな工夫で、「源氏店」では与三郎の運命が大きく変わったことを見せます。「でも、歌舞伎をよくご存じでないお客様は、別の狂言が始まったように思われる」。
今回の上演では、「見染」と「源氏店」の間に「赤間別荘の場」が入ります。「あとのせりふで説明はしていますが、実際にお目にかけることで、その説明のせりふがよくわかっていただける。お客様に親切にお見せするということを、父、十三代目仁左衛門が常日頃言っていたものですから、それを受け継いでいます。東京でもあまり出ませんけれど、復活していきたい」と意気込みました。
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「非常に古風だけれど、非常に写実。(映画界から関西の歌舞伎に出演した頃)ハイカラでそれまでの歌舞伎界とは違う新鮮さがあり、東京の舞台に出られるようになってだんだん古風になられた。女方というものがそれまでとちょっと変わりました」。四世雀右衛門の印象を聞かれてそう答えた仁左衛門。「最近、おじ様を彷彿とさせるところがあります。歌舞伎の褒め言葉に“親父そっくり”というのがありますけど、我々の世界ではまだまだ若い人ですから、伸びしろを持っていらっしゃるのが素敵なことですね」と、新しい雀右衛門に期待を寄せました。
大阪松竹座「関西・歌舞伎を愛する会 第二十五回 七月大歌舞伎」は、7月3日(日)から27日(水)までの公演。チケットは6月5日(日)より、チケットWeb松竹、チケットWeb松竹スマートフォンサイト、チケットホン松竹にて発売予定です。