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亀蔵が語るシネマ歌舞伎『阿弖流為〈アテルイ〉』―「歌舞伎夜話 特別篇」
6月14日(火)、「ギャラリーレクチャー 歌舞伎夜話(かぶきやわ) 特別篇」に片岡亀蔵が登場、今月25日(土)に公開されるシネマ歌舞伎『歌舞伎NEXT 阿弖流為〈アテルイ〉』について語りました。
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今回の歌舞伎夜話は、シネマ歌舞伎公式Twitterアカウントのフォロワー5000人突破を記念しての開催。Twitterでは、公開間近のシネマ歌舞伎『歌舞伎NEXT 阿弖流為〈アテルイ〉』にちなみ、亀蔵への質問を募集しました。公演中のコクーン歌舞伎『四谷怪談』の舞台から駆けつけた亀蔵の手には、黒いクマのぬいぐるみが。自身が『阿弖流為〈アテルイ〉』で勤めた蛮甲、その相棒役の“クマ子”を「本当は呼びたかったんですが…」と茶目っ気を見せ、会場の空気を一気につかみます。
ひと足早く作品を見た感想を、「音がいいですね。とても細部までこだわってつくり込まれていて、舞台上で感じていたよりも迫力があります、開演して音楽がかかるとテンションが上がっていったんです」。生の舞台の迫力を生かし、さらに音響効果にこだわってつくり上げられた新たなシネマ歌舞伎の映像と音のマッチングに感心していました。
また、シネマ歌舞伎ではクローズアップになるため、「ちょっとした表情、緻密な芝居が、大写しのスクリーンではよくわかります。生で何十回と見てくださった方でも、ここまでのアップは見られないので、ぜひ注目してみてほしい」とアピール。普段の歌舞伎とは違うドラマチックな照明も、「舞台上でのほんの数センチの違いが大事になるんですよ。光の当たり方、角度、影の具合で表情が全然違う印象になります。シネマ歌舞伎にすると、そのあたりもより鮮明にわかります」。
亀蔵はTwitterに寄せられた質問に答えつつ、共演の市川染五郎、中村勘九郎、中村七之助らとの自由なやりとりのシーン、舞台裏での様子などを、臨場感たっぷりに再現。次々に明かされる秘話の数々に、笑いが絶えません。
自身が演じた蛮甲は、対立する蝦夷と大和朝廷との間で、我が身が危うくなれば寝返りも辞さない男。その生き様は「変に見えるかもしれませんが、いつでも、どこへ行っても、生き残るために懸命。器用にうまいこと世の中を渡っているのではなくて、そのときどきは本気なんですよ」と語ります。
話題を呼んだ迫力の立廻りについては、小道具の太刀を使い、劇団☆新感線流の“斬り合っているように見せる秘訣”も実演しました。普段と違う体の動かし方をする機会も多かったそうで、「普段の歌舞伎だと、膝を上げて走るとか、急に止まることはまずないんですが、いのうえ歌舞伎では全力です。もちろん体はつらい。でも、お客様があんなに喜んでいらっしゃるのを見ると、やっちゃうんですよね」と、言葉のはしばしに俳優の“性(さが)”をのぞかせました。
『大江戸りびんぐでっど』ほか、シネマ歌舞伎化されたほかの出演作にも話題が及びました。「ほかの方のなさらない、人間じゃないような役を一手に引き受けております」と笑わせ、その原点だと語ったのが『法界坊』の番頭正八。
「僕は歌舞伎の普通の番頭さんしか知らない。それが(演出の)串田さんに何パターンも求められて…完全にパニックになって、行き着いたのがあの形です。勘三郎さん(当時勘九郎)が『それ面白いじゃん! その感じ』とおっしゃって、僕に火がついた。二人と芝居をした経験が、今の心の支えです」。歌舞伎の枠の中に収まって、何もやろうとしないのが一番いけない、と、常に挑戦していく姿勢を見せました。
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ますます公開が待ちきれないシネマ歌舞伎『阿弖流為〈アテルイ〉』は、6月25日(土)から全国57館での公開です。