ニュース

新橋演舞場「初春歌舞伎公演」初日の賑わい

 1月3日(水)、新橋演舞場「初春歌舞伎公演」が初日の幕を開けました。

 新橋演舞場の2018年は『天竺徳兵衛韓噺(てんじくとくべえいこくばなし)』から。着慣れない裃姿でちょっと居心地の悪そうな徳兵衛(獅童)が、「おら、あのような美しいおなごを見たのは生まれて初めて」と、ひと目惚れするところから始まります。天竺へ渡海してきたという船頭の徳兵衛の話は、時事ネタをとり込んだり、1年1カ月ぶりに東京の歌舞伎の舞台に登場する獅童自身の話を盛り込んだりで、客席に大きな初笑いをもたらしました。

 

 純朴に見えた徳兵衛でしたが、とある縁から大明国の再興の任を担うことになり、蝦蟇の妖術を授かります。ここからは蝦蟇の妖術、奇術を使う徳兵衛のみせどころで、早替りに大立廻り、泳ぎ六方など、歌舞伎の面白さがたっぷり。見得をする蝦蟇にはどことなく愛嬌も漂います。そして、獅童が初挑戦となる宙乗り。お客様の拍手を力に、「大願成就は目前、つづらしょったがおかしいか」と、堂々と宙を駆け抜けました。

 

 正月ならではの一幕となったのは、「寿初春 口上」。海老蔵が新年の挨拶に続き、「これより“仕初め”より“巻触れ”をご覧いただきます」と、古式ゆかしい芝居の年中行事の一つとして、三方に乗せた巻紙を取り出し、当月の狂言名題を読み上げました。続いて、初世團十郎から伝わるという“にらみ”。「これをご覧いただきますると、一年間、無病息災に過ごすことができると伝わっているそうでござりまする。先祖の衣鉢を力種に、はなはだ未熟ではございまするが、ご覧に入れまする次第にござりまする」。ぱっと目を見開いた瞬間に鋭い眼光が放たれ、大きな拍手が沸き上がりました。

 

 Aプロ最後は、海老蔵が新たに力を注ぐ新歌舞伎十八番から『鎌倉八幡宮静の法楽舞』。海老蔵が元は白拍子だったという老女に始まり、白蔵主(はくぞうす)や油坊主、三途川の船頭など、早替りも交えて次々と踊り分けます。舞台下手(しもて)の常磐津に、上手(かみて)の清元が加わり、物の怪たちが現れるたびに竹本、河東節、長唄と増え、掛合の組み合わせを変えたり、合奏したりと、目も耳も変化で楽しませます。

 

 最後に「ただ恨めしきは戦の世の中」と、物狂いとなった美しき静御前が化生となり、壮絶な幕外の引込みで打ち出しとなりました。

 Bプロは通し狂言『日本むかし話』。彼方の星で安泰をもたらしていた不思議の石が鍵となり、お馴染みの昔話が一つながりの物語となりました。冒頭に映像を駆使することで、壮大な宇宙を駆け抜けるかのような自在な視点がもたらされ、おとぎの世界に広がりが生まれます。投げ捨てられた不思議の石が、最初にたどり着いたのは竜宮城。男の生き胆を食べ続けないと死んでしまうというつらき定めの乙姫(笑也)は、浦島太郎(右團次)のやさしい心根にふれて自らの運命を変えてしまいます。

 

 次に石が現れたのは、桃太郎が鬼退治にやってくる鬼ヶ島で、そこでは鬼石として祀られていました。鬼の視点で描かれる桃太郎話の面白さに、鬼たちそれぞれが個性を発揮して笑いのあふれるひと幕になりました。一方、石を探す使命を負って彼方の星から天の川を流れてきた娘、かぐや姫は、竹取の翁に育てられることに。堀越麗禾が愛らしい舞を見せました。

 

 花咲か爺さんの話に出てくる白犬(海老蔵)が、実は別の昔話の犬だったり、一寸法師(鷹之資)の目で見た巨大な姫とのやりとりを溌溂とした踊りで見せたりと、不思議の石を軸に、さまざまな昔話を自在に駆け抜け、立場を変えて物語ることで、新鮮な感動が生まれました。そしてついに、美しく成長したかぐや姫(児太郎)が、自らの運命を悟り…。最後まで昔話の懐の深さが歌舞伎の楽しさ、面白さとなり、カーテンコールでは拍手が鳴りやみませんでした。

 新橋演舞場「初春歌舞伎公演」は、1月26日(金)までの公演。チケットは、チケットWeb松竹チケットWeb松竹スマートフォンサイトチケットホン松竹で販売中です。

2018/01/04