ニュース

芝翫が襲名披露最後の「松竹大歌舞伎」中央コースを語る

芝翫が襲名披露最後の「松竹大歌舞伎」中央コースを語る

 

 

 6月30日(土)から全国22カ所で行われる「松竹大歌舞伎」中央コースで襲名披露する中村芝翫、中村橋之助、中村福之助と、出演の中村梅玉が公演について語りました。

 一昨年10月・11月の歌舞伎座を皮切りに、1年半にわたり行われた芝翫親子の襲名披露も、この公演で締めくくりとなります。芝翫はこれまで公演ができたことに対する深い感謝とともに、「父の偉大さを痛感し、梅玉のお兄様の穏やかな常日頃の姿勢を拝見して歌舞伎俳優たる者、こうでなくてはいけないと身を持って教わった気がいたします」と語り出しました。

 

芝翫が襲名披露最後の「松竹大歌舞伎」中央コースを語る

顔見世で勤めた長兵衛を全国の皆様へ

 昨年12月、ロームシアター京都で行われた「吉例顔見世興行」で、芝翫は初めて『人情噺文七元結』の左官長兵衛を勤めました。今回は2度目の長兵衛。「自分の仁に合うかな、体に合うかなと、最初は不安を抱いておりました。紀尾井町のおじ様(二世松緑)、中村屋のおじ様(十七世勘三郎)、(十八世)勘三郎の兄が勤め、私には無縁、ほど遠い役かなと思っておりましたが、勤めさせていただき、やはり作品の素晴らしさ、人情の温かみ、襲名で支えていただいたことで経験した人の心の優しさ、といったものを味わった気がいたしました」。初役とはまた違った長兵衛が、全国の皆様の前にお目見得します。

 

芝翫が襲名披露最後の「松竹大歌舞伎」中央コースを語る

 橋之助と福之助は、ダブルキャストで初役の文七と鳶頭を勤めます。橋之助は、「これまで舞台を見てきたなかでも、いつか、やらせていただけたらと、憧れていたお役。世話物のなかで軸となるお役も初めてですが、口慣れた感じで、芝居に溶け込んでいけるように勤めたい」と意欲を見せ、福之助も「昨年、父の初役の舞台を見ており、やらせていただけるという実感はまだ沸いていないのですが、今まで見てきた芝居に出させていただけるということで、楽しみな気持ちでいっぱいです」と続けました。

 

兄弟が息を合わせて襲名披露の成果を

 もう一つは『棒しばり』。橋之助と福之助の二人が、「身に余る大役をたくさん勤めさせていただいた」と感謝する襲名披露興行、最後の演目です。「小さい頃は家で芝居ごっこをするのが兄弟三人の遊びでした。そのなかでも『棒しばり』は大好きな演目で、頻繁に出てきました。弟と手を携えて一つの演目をさせていただける、これほど心強いことはありません。狂言物の匂いを大切に、お客様がお帰りになるとき、観に来てよかったなという感想が出るように勤めたい」と橋之助。

 

芝翫が襲名披露最後の「松竹大歌舞伎」中央コースを語る

 福之助はこの襲名披露で、「濃い1年半を過ごすことができ、吸収できるものがたくさんあった」と振り返り、「父、兄と息を合わせて踊らなくてはならない『連獅子』などで、試行錯誤し、家族で話し合ってやってきました。これまでの積み重ねで、どれだけ兄と『棒しばり』ができるのか、頑張らないといけません。若手だからこそのフレッシュさ、純粋さをお客様にお届けできるようにしたい」と、力強く語りました。

 

芝翫が襲名披露最後の「松竹大歌舞伎」中央コースを語る

 三人の意気込みを聞いて梅玉は、「芝翫を継いでからますます役者ぶりが大きくなり、歌舞伎界のリーダー的存在となることは間違いないと、安心しています。そして、襲名まではひよっこだった息子たちの役者ぶりがよくなって、一人前の俳優になってくれたのがとてもうれしい。歌舞伎は芸の伝承がいちばん大事ですが、襲名して役者ぶりが上がるのはすごくいいことです」と、傍らで目を細めていました。

 

親しみやすい、わかりやすい演目で

 北から南まで回る夏恒例の公文協の公演、「移動では土地の方にふれあうことが多く、芝翫さん、と声をかけられて襲名を実感したりすることもございました。(普段の劇場とは)お客様のみどころが違っていたりして、新しく気づくことも多いので、私は大好きです」と芝翫。会場により舞台の大きさが違ったり、所作舞台の状態に違いがあったりもするけれど、「そこで発見があって、芝居のエッセンスとして取り入れるとまた面白い」とも。福之助は自分たちが公演をすることで同世代の、「大学生や若い方々に観に来ていただきたい」と期待していました。

 

 「生で歌舞伎を観る機会のない方々に歌舞伎をお届けする。精いっぱい全力で期待にお応えしなければ」と梅玉が気合を見せ、「今回は、どなたがご覧になっても、親しみやすく面白い狂言」と、太鼓判を押した芝翫は、「劇場へ足を運んでその空気、空間を味わうと病みつきになります。この公演が歌舞伎鑑賞のきっかけになれば」と、お近くの会場へのご来場を呼びかけました。

 「松竹大歌舞伎」中央コースは6月30日(土)~7月29日(日)まで、全国22会場で開催。チケットの詳細は公演情報のお問い合わせ先でご確認ください。

 

芝翫が襲名披露最後の「松竹大歌舞伎」中央コースを語る

 「松竹大歌舞伎」中央コース 左より、安孫子正松竹株式会社副社長、三代目中村福之助、四代目中村橋之助、八代目中村芝翫、中村梅玉、松本辰明(公社)全国公立文化施設協会専務理事

2018/05/16