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歌舞伎座「十二月大歌舞伎」初日開幕
12月2日(日)、歌舞伎座百三十年「十二月大歌舞伎」が初日の幕を開けました。
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歌舞伎座百三十年の掉尾を飾る「十二月大歌舞伎」は、賑やかな囃子で幕を開ける『幸助餅』から始まりました。
かつては茶屋で小判の雨を降らせていたのに、関取に入れ揚げて身代を潰し、いまや見る影もない幸助。上方のぼんぼんの風情をまとい、松也が初役に挑みました。大関となって故郷に錦を飾る雷(いかづち)の中車は2度目。店を傾けてまでつぎ込んだ雷に愛想尽かしをされ、幸助の手に残ったのは引きちぎった羽織紐だけ。この羽織紐が幸助を変えます。随所に相撲の言葉を散りばめたせりふが楽しく、情に厚い登場人物たちがおおいに笑わせ、思わずほろっとさせてくれます。
続く『於染久松色読販(おそめひさまつうきなのよみうり) お染の七役』では、花道から油屋の娘のお染が駆け出してきてから、丁稚の久松、奥女中の竹川、久松の許嫁のお光、そして、芸者の小糸と、初役の壱太郎が序幕で早々に早替りで5役を見せます。壱太郎が早替りで登場するたびに客席から歓声と拍手が起こりました。土手のお六が、「莨屋(たばこや)」で松緑の鬼門の喜兵衛を相手に色気を見せ、「油屋」では肝の座った強請ぶりで周囲を黙らせます。役柄それぞれの性格をくっきりと演じ分け、大詰はお染久松の早替りを組み込んで、狂乱したお光の踊りに、船頭相手のお六の所作ダテとみどころたっぷり、大盛り上がりの中、切り口上で昼の部を打ち出しました。
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初日の夜の部はAプロで、『壇浦兜軍記(だんのうらかぶとぐんき) 阿古屋』の遊君阿古屋は玉三郎が勤めます。堀川御所に彦三郎の重忠、人形遣いとともに松緑の岩永が登場し、坂東亀蔵の榛沢が呼び込んで、六人の捕手に囲まれた阿古屋が現れます。舞台が整ったところへ出てくるその大きさに場内も圧倒され、拍手が起こり、岩永の脅しにも屈することなく、投げ出した身の麗しさにため息がもれます。琴、三味線、胡弓を奏でながら唄い語られる言葉は、その情景が物悲しく、弾き手の心情を推し量るよりも聞き手の心が揺さぶられるものでした。
金を貯め込んでいると聞いて泥棒の権太郎が忍び込んだ、あんまの秀の市のあばら家での一夜を描く『あんまと泥棒』。限られた空間での二人芝居なのに、歌舞伎座の広い舞台いっぱいに濃密な芝居の空気がじわじわと広がっていきます。最初はラジオドラマとしてつくられ、そのときの秀の市が八世中車でした。当代は3度目の秀の市、松緑は初役の権太郎です。どやしつけて脅す「お泥棒様」に、身の上話で同情を引く「座頭ふぜい」、二人のやりとりにちょこちょこと本性がのぞくところが鍵で、せりふの妙、掛け合いの妙にすっかり酔わされました。
Aプロの最後は、Bプロで阿古屋を演じる二人がそろって、『二人藤娘』に登場します。間口の広い歌舞伎座の舞台いっぱいに花房を広げた藤も壮観なら、その藤の絡んだ松を背にした梅枝と児太郎の藤の精は、まさに絵から抜け出したかのような美しさ。前半は娘の可憐さ、可愛らしさがあり、後半の酒が入ってからは艶やかさがあります。一人で踊るところもあれば、二人が別の振りで踊ったりそろえたり、衣裳も変わってどこをとっても華やかなひと幕です。
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木挽町広場にはクリスマスツリーとともに、来年の干支の亥にちなんだ品々も並んでいます。慌ただしい年の瀬ですが、歌舞伎座で今年一年を締めくくる舞台を、ゆったりとお楽しみください。
歌舞伎座「十二月大歌舞伎」は12月26日(水)までの公演。チケットは、チケットWeb松竹、チケットホン松竹で販売中です。