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師走の京の風物詩「吉例顔見世興行」が南座で開幕
12月1日(土)、南座「當る亥歳 吉例顔見世興行」12月の公演が、初日を迎えました。
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歌舞伎発祥の地、京都で明治39(1906)年、白井松次郎、大谷竹次郎の双子の兄弟の松竹合名会社が南座の経営を引き継ぎ、「吉例顔見世興行」も松竹が手がけることになりました。新開場記念のふた月目の公演は、今日の歌舞伎の礎をつくった二人の追善として行われます。
平成8(1996)年以来、22年ぶりとなる2カ月連続の顔見世興行の後半、師走の「吉例顔見世興行」は『寺子屋』で開幕です。17年前、初役のときは源蔵と交互出演だった松王丸を初めてひと月通す芝翫。そのときと同じ銀鼠色の雪持ちの松の衣裳で登場しました。愛之助の源蔵、扇雀の戸浪の夫婦はともに初役です。新たな世代の『寺子屋』が最後に絵面で美しくきまると、新しい南座の吉例顔見世興行がしっかり京都のお客様に印象付けられました。
続く『鳥辺山心中』は南座界隈の四条河原や祇園が物語の舞台となる、ご当地狂言といえる一作です。半九郎が切々と聞かせる岡本綺堂の名せりふ、半九郎から京の鶯にたとえられるお染の清らかさ。半九郎お染は梅玉、孝太郎の初コンビで、半九郎の運命を変えてしまう源三郎は初役の右團次です。せっかくあつらえた晴着が、正月を待たずして死出の旅へと向かう二人を美しく引き立て、四条大橋にかかる月がなんともいえない余韻を残します。
『ぢいさんばあさん』は仁左衛門の伊織に時蔵のるん。同時に上演された初演時、大阪で伊織を十三世仁左衛門、東京でるんを三世時蔵が勤めており、世代を経ての東西顔合わせというのも京の吉例顔見世興行ならではです。序盤の二人は見ていて微笑ましくなる仲睦まじさ。しかし、事件が京都の鴨川で起こります。37年の月日が流れ、伊織とるんの再会の場面では前半の伏線が見事に生かされ、心温まるラストはお客様の笑いと涙を誘いました。
糸経(いとだて)をそっと開けて忠兵衛梅川の二人が顔を見せた途端、大きな拍手が起こった『新口村』。藤十郎の忠兵衛に扇雀の梅川、孫右衛門は初役の鴈治郎という、親子三人の共演です。雪の冷たさがしんしんと伝わってくる舞台に、父と息子、舅と嫁の互いに思いやる気持ちの温もりが広がり、お客様の心を揺さぶります。忠兵衛と梅川の行く末を思いながら、昼の部の打ち出しとなりました。
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夜の部は親子孫三代で見せる『義経千本桜』。「木の実」で孝太郎の若葉の内侍、千之助の小金吾の一行に、仁左衛門の権太が声をかけ、まんまと路用の金を奪い取ります。「小金吾討死」では多勢にとり囲まれながらも主のために命をかける小金吾が、最後はかなくも散っていきます。そして「すし屋」。嘘涙で母親に甘える可愛らしさ、父の勘当を許してほしい一心の企てが、最後に不幸を呼んでしまう哀切…。権太の心情に同情する客席にいく筋もの涙がこぼれました。
大歌舞伎での上演が珍しい『面かぶり』は、鴈治郎が若柳流の振付で踊ります。名刀鬼切丸の精霊が童子姿で現れ、子どもの遊びをとり入れた面白い振りで楽しませます。長唄の歌詞も面白く、曲の調子やテンポの変化に合わせ、面をつけたり引抜きをしたり、次々と踊り分けていく様を見るだけでも愉快です。いたいけな幼子が遊んでいるように、難しい振りも自然に見せ、最後は馬の蹄に見立てた馬具を使って踊り、大きな拍手を浴びました。
吉例顔見世興行ではこれが戦後4回目という珍しい上演となる『弁天娘女男白浪』。22年前の前回上演時に浜松屋の倅で出演した愛之助が、永楽館歌舞伎で見せた弁天小僧に再び挑戦しました。南郷は右團次。関西出身の二人ががらりと雰囲気を変え、江戸の芝居の味を出しました。稲瀬川勢揃いで五人が次々登場して花道に並ぶと、舞台と客席の一体感が高まって、南座が歌舞伎の上演にぴったりの劇場であることが体感できました。
平成最後の吉例顔見世興行を締めくくるのは、次世代を担う若い二人の『三社祭』。父の五世富十郎の映像を見てぜひ踊りたかったという鷹之資と、同級生で日頃から仲がよいという千之助が、息の合った溌溂とした舞台を見せました。きびきびとした悪玉、善玉の振りは見ていて気持ちよく、新鮮なコンビ誕生に、大きな期待の拍手が送られました。
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南座「當る亥歳 吉例顔見世興行」は12月26日(水)までの公演。チケットは、チケットWeb松竹、チケットホン松竹で販売中です。