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愛之助が語る、博多座の通し狂言『鯉つかみ』

愛之助が語る、博多座の通し狂言『鯉つかみ』

 

 3月3日(日)から始まる博多座開場二十周年記念「三月花形歌舞伎」で、通し狂言『鯉つかみ』に出演する片岡愛之助が、公演に向けての思いを語りました。

伯父から教わった『鯉つかみ』

 平成24(2012)年11月に永楽館で初役として勤めて以来、愛之助が『鯉つかみ』に出演するのは、今回で6回目。10役早替り、宙乗り、本水の演出が入った上演で、「これで完成の形になるのではないだろうか」と、早速期待がふくらむ言葉が愛之助から飛び出しました。

 

 伯父の我當が昭和48(1973)年8月南座の『鯉つかみ』に出演し、「河内屋のおじ様(三世実川延若)から習い、すごかったという話をずっと聞いていて、いつかやりたい、伯父が元気な間に教えていただきたいと思っていました」。念願かなって、永楽館で勤めることになり、その際、我當の指導を受けました。そのとき言われたのは、「水の中に潜るので、慌てないこと。伯父は立役ですが、昔のことをよく覚えていて、女方のことも全部、指導してくれました。かちっとした骨組みを最初につくってくれたので、感謝しています」と、思いを込めて話しました。

 

愛之助が語る、博多座の通し狂言『鯉つかみ』

上演を重ね、今できるベストの作品へ

 『鯉つかみ』は、「歌舞伎の醍醐味がすべて詰まっているといっても過言ではないような作品。歌舞伎らしいいでたちもたくさん見られ、人間関係や人の心情が色濃く描かれた場面もあれば、ケレン味もあります。本当にエンタテインメント性に富んだ作品」です。「(脚本・演出の)水口先生と話し合いながら、練り上げていきました。意外と作品をつくるときは、冗談みたいな会話のなかで出来上がっていくことがあり」、無理だと思っていた鯉からの登場は、愛之助のひと言がきっかけで実現に至りました。

 

 公演のみどころの一つである10役早替りは、「引っ込んだら、次に出没する地点にいかに速く走るかというのが僕の仕事。(引っ込んだ先に)四、五人が待ち構えていて、一瞬で、衣裳を脱がされます。そして、次の場所まで走って、また装着。裏方さんが大変だと思います」と、信頼の厚さがうかがえます。また、奥方漣と余呉左衛門の密会を描く船上の場面は、「面白いですが、僕と、僕が出てるから、大変。そして最後に…。この二人のところがやっぱり苦労しましたね」とにっこり。演出の詳細は隠しつつ、大変ながらも楽しんでいる様子が伝わってきました。

 

 また、過去には「水に飛び込んだときに、衣裳が全部ほどけてしまったときがありました。着物は浮いてしまうので本当に困りました」と、本水を使うからこそのエピソードも披露。本水を使った立廻りは、体力を消耗する大変な演出ですが、「僕がバシャバシャ動き出したら、ビニールを上げて、皆さんアトラクションのように楽しんでいただけたら」と、お客様と一緒に舞台をつくっていきたいという愛之助の強い気持ちが表れました。

 

心がけるのは、お客様が楽しめること

 今回は、通し上演で、お客様へのわかりやすさに特にこだわったという愛之助。前回、大阪松竹座で上演したとき(平成27年6月)より、「どうしてその鯉と戦いになるのかということを深く掘り下げ、今回は一場面付け足して」の上演となります。新たに加わる場面は、「世話場、いわゆる、普通のせりふ劇のような場面なので、非常に見やすくなっていると思います」。芝居をとおして、「義太夫があったり、世話場があったりと、テンポが変わって」変化に富んだ運びでも、お客様を楽しませます。

 

 今回、博多座への出演は約5年ぶりになります。「お客様が非常に熱い」という印象を語り、以前『義経千本桜』「渡海屋」に出演した際、「一番前に座るお客様が絶妙なひと言をおっしゃって、芝居を続けるのもひと苦労でした」。芝居に入り込んでご覧になる博多のお客様の熱い気持ちが、愛之助は本当にうれしそう。「面白かったら笑い、悲しかったら泣き、いいなと思ったら拍手して、(芝居に)参加していただく。役者どうしのせりふのキャッチボールとお客さまとのキャッチボールが成立して、一つの作品ができ上がっていくと思っていますので、博多座での公演が非常に楽しみです」と、自身の期待もにじませました。

愛之助が語る、博多座の通し狂言『鯉つかみ』

 1月30日(水)には、岩田屋本店で開催の「サロン・デュ・ショコラ」に登場し、ひと足早く博多の皆さんにお目見得した愛之助。“鯉つかみ”に“恋つかみ”をかけ、女性30名に、チョコレートと特製のメッセージカードを渡すイベントで、皆さんへ博多座へのご来場を笑顔で呼びかけ、ハートを“わしづかみ”にしました。

 朝から晩まで、愛之助が奮闘する、博多座開場二十周年記念「三月花形歌舞伎」は、3月3日(日)から24日(日)までの公演。チケットは博多座オンラインチケット、電話予約センター、劇場窓口ほかで、販売中です。

2019/01/31